ゆめ

□0228
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校門から出た私達を、北風は容赦なく襲った。


「さ、ささささむい!」

『冬だからな。』


吹き付ける風に思わず身震いする。
マフラーや手袋でいくら武装を固めようとも相手は空気、固い結束を交わした繊維の合間をいとも簡単に突破してきてしまうのよ。ようするに寒いものは寒いってこと!

そりゃあスイッチは口つかわないからマフラーぐるぐる巻きでも不自由しないだろうけど、なんていうかこう…片思いしてる身としてはもう少しガード緩くしてもらったほうが嬉しいんだけどな。

「ね、スイッチ。雪降るかな?」


『寒波は来ているようだが……俺の予想ではすぐ過ぎるから無理だろうな。』


「………。」


隣の無機質な音声は、この風みたいに冷たい事しか喋ってくれない。俺の予想ではって、いつの間に天気予報士になったのよ!夢を持たせるなんて概念はないのだろうか。
確かに私はボッスンやヒメコみたいに頼りにならないし夢を持たせる価値もないかもしれないけど……あぁ、自分で思って悲しくなってきた。

折角2人っきりで帰るなんてまたとない告白のチャンスが来てるのに、このままじゃいつもと変わらないじゃない!
はやる気持ちはあれども、いざ話を切り出そうと顔を見ると声にすらできなくなってしまう。ちなみにメールという手段は彼とアドレスを交換した時点で消えている。(テンションが違いすぎる!)

そんな間にも刻一刻とタイムリミットは迫ってきている。私の家とスイッチの家を分ける路地は、もうすぐそこだ。とりあえず何でもいい、時間稼ぎしなくちゃ。


「ま、待って!」


私は返事も聞かずに電柱の脇に備え付けられた自動販売機に向かった。もちろん冷静に飲み物を選んでる余裕なんてない。財布から500円玉を出して、適当に2回ボタンを押した。


「はい、これオゴリ。」

自販機からはきだされた缶の一つををスイッチに投げる。緩い放物線が私達をつないだ。


『ありがとう』


温かさを主張する缶コーヒーはスイッチの手の中に収まって、彼の眼鏡をくもらせた。



…いい手があった。口に出せないなら、書いてしまえばいいんだ。


「…スイッチ、ちょっと目瞑って!」
『断る』


…何も即答しなくても!確かに昼間の路上で目瞑るなんて勇気いるかもしれないけど、ちょっとくらい考えてくれてもいいじゃないんですかスイッチ君!


「そんな事言わずに!30…ううん10秒でいいから!」


『どちらにしろ眼鏡がくもっているから何も見えないが?』


「いいの!むしろそれがいいの!すぐ終わるから早く!」


『わかった』


10、9…とカウントダウンが始まる。スイッチレベルになると目閉じててもキーボード打てるのか!と感心してしまったけど今はそれどころじゃなくて、ああ何か緊張してきた、やっぱりやめとけばよかったかな、とか今更後悔!
……でも、もうこうなったら実行するしかない!




君の瞳のいちばん、近くに



カウントは0を告げた。一気に熱くなった体から、レンズをなぞった指の冷たさだけが切り離されていた。



(ただ二文字、書いただけなのに)



*******(080228)
スイッチ生誕祭!
誕生日ネタにしようと思ったのにナ、ナンダコレ!

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