記念SS

□Fall in love
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ハボックが訓練から戻る途中、廊下の先にファルマンの後ろ姿が見えた。
声を掛けてから1人じゃなかったことに気がついた。ファルマンが振り返り女性が何かを渡しているのが見えた。
女性はファルマンに笑いかけ何か話すと、ファルマンは女性に向き直り優しく微笑んで頷いた。
何だか見てはいけないモノを見てしまったような、ざわざわとした嫌な気持がハボックに広がった。
女性はハボックにも軽く会釈をすると立ち去っていった。
「悪い、邪魔したな」
いいえ、とファルマンは首を振って近づいてくるハボックを待っている。
「可愛い子だな、誰?」
ざわざわした気持ちを隠し軽い調子でハボックが尋ねると、ファルマンは小さく首を傾げ困ったように笑った。
「名前はちょっと分からないですね」
「仲良く話してたじゃないか」
「本当に知らないんですよ」
ちょっときつい口調になってしまったハボックにファルマンは戸惑ったように見ている。
「何話してたんだ?」
「期待するような甘い話はありませんよ」
ファルマンは微笑むと並んで歩こうとしたが、はっきりと話さないファルマンにハボックはムッとした。
みごとに顔に出ていたのだろう、ファルマンは苦笑した。
「ハンカチと貸したお礼をもらいました」
それだけですよとファルマンは微笑み、余計にハボックのイライラが増した。
あの子と何があったのか教えてくれたって良いじゃないか。どうして教えてくれない?
「何だよ、隠さなくてもいいだろ?」
眉根を寄せてファルマンはハボックを見た。そして小さく溜め息を吐いた。
「あの女性が困っていたからハンカチを貸しただけです。そして洗って返してくれました、お礼と一緒に」
クッキーか何かだろう、小さなピンクの紙袋と白いハンカチをファルマンはハボックに見せた。
「それだけです、何もありません」
ファルマンは怒っているようにも困っているようにも見え、どうして良いかハボックは分からない。
いたいた!ファルマン!と声が掛かりブレダが現れた。
「大佐が探してる。何でもこの間の会議のことが聞きたいらしい」
わかりましたとファルマンは足早に去っていき、ハボックはずっしりと落ち込んだ。
「何ケンカしてんだよ」
ブレダが腕を組んでハボックを見ている。
「わかんねーよ。アイツが話してくれなかっただけだ」
「話してたじゃねえか」
「でも聞きたかったのはソレじゃない」
アイツが話してくれなかったのが何でこんなに辛い?
きっと答えてもらっても、あのざわざわした気持ちが治まるとも思えない。
ホラ行くぞ、とブレダはハボックを引っ張り促すがハボックは俯いたまま動かない。
「子供みたいなワガママするんじゃない」
「・・・少し頭冷やしてから行く」
ブレダは溜め息を吐くと早く来いよと項垂れた頭をかき混ぜた。
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