頂き物

□禍を転じて福と為す
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「―――どうかしましたか?ハボック少尉」





東方司令部の廊下で擦れ違った女性の背中をじっと見送るハボックに、隣を歩いていたファルマンが不思議そうに尋ねた。


「今の方は、少尉のお知り合いの方ですか」
「いや、別にそうじゃないんだけどな」
「だったら何だよ?」


2人の後ろを欠伸をしつつ歩いていたブレダも、つられてその女性の背中を見る。
見たが、格段どうということも無かった。
ごく普通の、女性の軍人の後姿に間違いない。
ハボックは、視線を女性の背からファルマンに一瞬だけ移し、直に正面へと戻した。
そして口に銜えた煙草から静かに煙を立ち上らせ、僅かに笑みを浮かべる。



「結構、美人だと思ってな」
「はぁ?」


瞬時に呆れ声を上げるブレダ。
ファルマンは、表情を変えるわけでもなく、「なるほど」と静かに答えた。


「俺はあんな感じのが好みなんだよなあ」
「・・・そうかい」


背後からの非難の色を含んだ低音を受け流すと、またハボックはちらりとファルマンを見た。
彼は視線が合うといつもの顔で、


「ハボック少尉にお似合いだと思いますよ」


と、こちらもまた静かに言う。
するとハボックは慌てたように手を振り、急に立ち止まると若干大きな声で言った。
口からは落ちた煙草が、足元で細い煙を立ち上らせていた。


「いや、別にそこまで俺の好みじゃねえって!第一、俺にはお前っていう魅力十分な恋人が居るしな!」
「・・・そういう事を言う時は場所を考えて下さい少尉」


急に立ち止まられたせいであやうく顔面をハボックで強打しそうになったブレダは、ますます呆れた顔でそのやり取りを見ていた。
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