記念SS

□恋に落ちて
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ハボックとファルマンがゆっくりとグラスを空けている。
「なぁ、前から聞きたかったことがあるんだけど」
「何でしょうか?」
本当なら4人で飲んでいるはずだったがマスタングがサボったために2人が残業を余儀なくされた。
2人で飲んでいるのも、ゆっくり話すのもちょっと珍しいことだ。
アルコールの力もあるのかポツポツとお互いのことを話し、うち解けた雰囲気が心地よい。
「どうしてブレダなのかなって」
ファルマンはパチパチと数回瞬きを繰り返しハボックを見つめると穏やかに微笑んだ。
「ストレートですね。そこがハボック少尉の長所であり短所でありますが」
「ゴメン、嫌だったか?」
「いえ、そんなことは。・・・ブレダ少尉に惚れ込んだからでしょうね」
返された言葉に今度はハボックが瞬きをしてファルマンを見ている。
ファルマンはグラスをゆらし穏やかに話しを続けていく。

「随分前になりますが中央の監査からブレダ少尉の個人監査を依頼されたことがあったんです。
移動したてで全くと言っていいほど私はブレダ少尉のことを知らなくて、仕方がないので『観察』していたんです。
仕事中はもちろん昼休みや休憩時間までずっと見てました。
見ていく内に見掛けとはうらはらに彼がとても好ましい人物だと分かりました。
1つずつ知っていく度にますます好感を持ちました。
ブレダ少尉と一緒に仕事をすることが出来て良かったと思いました」

ハボックは珍しく聞き手側になりグラスに口を付けると静かにファルマンの続きを促した。

「しっかりした仕事ぶりに好感が持て一緒にいることが多かった。
一緒にいる内に『監査』が終わったのにまだブレダ少尉を見ている自分に気がつきました。
その時は見るのが癖になってしまったのだろうと気にしなかった。
ヒューズ中佐のように側に居るのが心地よくて好きだったんです。ブレダ少尉の側にいるのが好きだった。
だから何も考えず、気付かずブレダ少尉の側にいたんです」
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