短編集

□make a wish
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「雨、上がったな」
「星もキレイに見えるな」
飲んだ帰り道ブレダとハボックは並んで空を見ながら歩いた。
「ガキの頃は俺の部屋からよく見たな」
「そうそ、ブレダの親父さんに早く寝ろって怒られてさ」
懐かしい〜と2人は笑う
「流れ星に3回願い事するんだ〜ってお前は頑張ってたな」
「だって叶ったって子がいたんだもんよ」
名前も思い出せない曖昧な記憶、だがその子は寝たきりの母親の病気が治ったと嬉しそうな顔を
ハボックは忘れない。
「流れ星 ・・・」
とブレダは指さしたがあっという間に消えていく
「3回願うのは難しいな」
「だからこそ叶うんじゃないのか?」
もし3回言えたなら胸をしめつけるこの願いは叶うのだろうか?
「また流れるかな・・・」
「待ってりゃ、そのうちな」


シャワーを浴びベッドに横になってもハボックは寝付けなかった
起きあがり煙草に火を付け煙を逃がすために窓を少し開ける。
風に揺れているカーテンを開けそこから見える小さな星空を眺めた。
流れ星が願う間もなく消えていく
だけど、きっと願うだけじゃオレの想いは叶わない
いつも考えてしまうのは想い人のこと・・・最近は昼夜問わず、だ
「余裕ねぇなぁ・・・」
どうしてアイツなんだろう
考えれば考えるほど分からなくなる。
生真面目で堅物、頭脳明晰で上官に絶対服従のいかにも軍人
自分が一番苦手な、一番気の合いそうもないタイプの人間
融通が利かない息の詰まる毎日
のはずが
しっかりとした仕事ぶりと細やかな気遣いに助かり
柔らかい人当たりと穏やかな雰囲気に癒され
以前よりも格段に快適にすごしている


中佐とファルマンが笑いながら話しているのがムカつく。
あんな楽しそうなファルマンは見たことがない。
大部屋の連中と笑っている時だって微笑んでいるだけなのに
巡回中の子ども達に見せる優しい顔、知識を披露している時の得意げな顔、照れた時のはにかんだ笑顔
だけど中佐と話している時のような顔を見たことがない。
なんてバカみてぇな嫉妬
「本当、余裕ねぇなぁ」
色んなファルマンを見ていたい、オレ以外にあんな笑顔を見せないで欲しい
アイツの“特別”になりたい
無理だということは分かっている、でも想うだけなら
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