短編集

□穏やか光線
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「裁縫道具もってねぇか?」
ボタンがついに取れちまったと、ブレダは上着を脱いだ
「携帯用でよければ」
そういってファルマンは引き出しから取り出した。
「お、悪いな」
受け取るとブレダは大部屋のソファーに座わり
一つも二つも変わらないと取れ掛かったボタンもブレダはハサミで切った


「つっ」
針が刺さった親指を咥え、ブレダは上着を放った。
裁縫はどうも苦手だ、どうにか一つは着けたがそれだって今にも取れそうに揺れている。
二つも取るんじゃなかった・・・とブレダはため息をついた。
「どうぞ」
ブレダの目の前にそっとコーヒーの入ったカップをファルマンが差し出す。
「すまねぇな。・・・こういうのは苦手でよ」
指がいくつあっても足りねぇとブレダは苦笑いしながらコーヒーをすする
そんなブレダを見てくすっと小さくファルマンは笑う。
「貸してください」
ファルマンはブレダの上着を取り、ソファーに並んで座る。
そしてブレダが苦労して着けたボタンを、すみません、と謝ってからハサミを入れる。

「はい、できました」
ブレダがコーヒーを飲み終わる前についついと縫い終わってしまった。
「ファルマン、上手いな」
自分が付けたモノとは比べ物にならない程キレイについている。
「一人暮らしが長いだけです」
「いや、本当に助かった。ありがとう」
ボタン付けから解放されて心底嬉しいとブレダが笑う
「いえ、これくらいならいつでもどうぞ」
そんなブレダを見てファルマンはくすくすと笑った。


「お前達そんなところで何をしている?」
大部屋の前で立ち止まっているハボックとフュリーに大佐は声をかける
「部屋に入り損ねました」
「のんびりというか穏やか光線にやられたッス」
困ったように頭を掻きつつ2人は答えた。

Fin.
 

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