短編集

□東方司令部
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ここはセントラル・・・の訓練場だったところ。
「本格的な調理場ができあがってるんだなぁ」
「なんでも大総統のご命令で錬金術を使って作られたと先ほどヒューズ中佐がおっしゃってましたよ」
ハボックとファルマンは話しながら自分達の調理場で調理器具を確かめている。
「冷蔵庫は空なんだな」
「ええ、あっちの食材置き場から持ってきて調理するのだそうです」
ファルマンがありとあらゆる食材を乗せた大きな台を指した。
「何にするか決めたか?」
「いえ、ハボック少尉は?」
「なーんも」
「どうしましょうか」
「どうするっていえば、コイツもどうするよ?」
「・・・つけるしかないでしょうね」
調理台の上に乗っているエプロンを掴みハボックはため息をつく。
服が汚れないようにとホークアイ中尉からの差し入れである。
2人とも持参していたが中尉の好意が嬉しかったので素直に受け取ってしまったのだ。
見てからにすれば良かった・・と思っても後悔先に立たず
袋から出てきたのはお揃いの白いエプロン
しかもフリル付きのとってもキュートvでラブリーvな代物
大の男がつけたら大爆笑間違いなし!である。
それを思うとハボックとファルマンは盛大なため息をついた。


お祭り好きな大総統から重要書類が送られてきたのは1ヶ月前のことである。
内容は『司令部対抗!男の料理合戦!!』
各司令部の代表2名で料理を作り、作品を大総統、審査員数名で試食し点数を付ける。
料理内容は自由。地域の特色を活かした料理を期待する。
ただし、代表2名は男性とする。だって男の料理だもんね♪ by大総統
P.Sマスタング君、審査員よろしく!
マスタング大佐は書類に目を通した瞬間に発火布を取り出したが、有能な部下の冷たい視線にしぶしぶしまい直した。
こうなりゃ道連れとばかりに運悪く?その場にいたハボックとファルマンに代表が決まる。
ホークアイ・ブレダはもちろん大佐の護衛、そして配線関係の手伝いでフュリーが借り出され・・・
何だかんだでマスタン組全員参加である。


2人は悲痛な面持ちでエプロンを身に着けたが、アームストロング少佐とヒューズ中佐のキラキラピンクのハートエプロンに会場は圧倒され霞んでしまった。
「助かった・・のか?」
「みたい、ですね」
しかし2人のキュートvでラブリーvなエプロン姿はしっかりと隠し撮りされて、現在は入手困難である。(販売ブレダ・総元ホークアイ)
「それでは制限時間は2時間、諸君の健闘を祈る!!」
にこやかな大総統からのスタート!!のかけ声に各代表達が我先にと食材に群がる。
「材料見てから決めるか」
「そうですね」
ハボックとファルマンもそれに続いたが、普段の買い物と変わらないのんびりした雰囲気である。
「ブレダが厚切り肉が喰いたいって言ってたんだけど、薄切りしかないなぁ」
「でしたら、重ねてみたらいかがですか?」
「そうだな、チーズやトマト挟んでカツにでもするか」
「曹長はポタージュスープが飲みたいって言ってましたね」
「うーん、コーンスープ飲んだばっかなんだよなぁ」
「あ、ガルバンゾーの缶詰がありますよ。ビーンズスープにしましょうか」
「残るはサラダか、グリーンサラダでいいよなぁ?」
「はい。それならこのドレッシングがいいですよ、レモンを搾ると美味しくなるんです」
「後はパンで終わりか・・・お!この食パンなら中尉が食べたがってたヤツができそうじゃね?」
「確かに。ハチミツトーストでしたか、あのオーブンなら十分ですね。
主食はこのバゲットでいいですよね」
「よし、メニューはOKだな」
「じゃ、作りましょうか」


真剣な表情で緊張感あふれる他の調理場と対照的に東部の2人はのんびりと和やか〜に談笑している。
「これが元のドレッシング・・・でレモンを入れると、ほら」
「本当にグッと良くなるな〜、なんかオレ好み♪」
「やっぱり、そうかなと思ってたんですよ」
微妙に甘い雰囲気を包み込みつつ・・・
「カツのソーストマトのデミ風でいいか?」
「はい、よろしくお願いします。私はスープを作りますね、ミキサー使っても?」
「こっち使わないからいいぞ〜」
「あ、油が無い!取ってくるわ」
「では衣を付けておきますね」
手はシャキシャキと動きお互いの作業がぶつかることもなく流れるように進む。
「トーストなんだけどよ、審査員用に切り分けるの難しくない?」
「それもそうですね・・・ゆずシャーベットがありましたが、そっちにしますか?」
「順番によっては口直しに先に食べてもらってもいいし、そうすっか」
皿に盛りつけ、使った調理器具を洗い終えると終了の合図が鳴り響いた。
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