短編集

□一欠片の純情
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ファルマンという人物に対して最初は特別な印象を持っていなかった。

マスタング大佐に報告と情報をもらいに寄った時に新しい人がいたから誰かと聞いた。
中央から異動してきたと教えてもらった。
ヒューズ中佐の部下で何回か会ったことがあると言われても
「ああ、そうだっけ?」としか思えなかった。
他の人の個性が強すぎるためまったく目立たなかったし
真面目で堅そうな仕事人間って感じで『つまらない人』とエドワードは思っていた。
実際にいつも仕事をしていて話すことはなく、自分もハボックやブレダと話していた方が楽しかった。


「あーっ!何時になったら終わるんだよ!!」
イライラしながらドサッとソファーに座る。
大佐に報告をしに来たのに会議で戻ってこない。いつも話し相手になってくれるハボックもブレダもいない。
報告だけですぐ終わるからとアルも置いてきてしまった。とにかく暇でしょうがない。
「どうぞ」
目の前にコーヒーが出される。
「あ、ありがと」
差し出されたカップを受け取りながらファルマンにお礼を言った。
「今日の会議は長いことで有名なんです。あと2時間は終わらない」
「マジで?!2時間もどうしろってんだよ・・・」
ガックリしながらコーヒーをすする。
ん?なんか味がいつもと違うぞ?
「もう少ししたらハボック少尉が訓練から戻られますよ」
「ああ、うん・・・ところで准尉、コーヒーの種類って変えたの?」
「いえ、同じですが。何故?」
「いつもよりずっと美味しいからさ」
もう一口飲みやっぱり美味しいと言えばファルマンが微笑んだ。
「ありがとう。コーヒーの入れ方には少し自信があるんだ」
「准尉がいれたの?」
ファルマンは微笑んだまま頷くと自分のデスクに戻っていく。
いれる人が違うだけでこんなにも味が違うもんなのか。あの『うっすいコーヒー』と同じモノだとは思えない。
今度からコーヒーを飲む時は准尉にお願いしよう。
ファルマンが戻って来て一冊の本を差し出す。
「推理小説なんだ、気分転換にどうだい?錬金術の役には立たないが時間つぶしにはなるよ」
「ありがとう」
退屈だったしエドワードは素直に本を借りることにした。
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