長編集

□つかの間のヒロイン(3)
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煙草の匂いがする・・・・・これは、この匂いは・・・・
そう、ハボック少尉だ
空色の瞳と金髪が見え笑っている。
ほら、やっぱりハボック少尉だ・・・・・
ファルマンは微笑むとまた瞳を閉じ寝返りをうった______
「っ?!」
ガバッとファルマンは起きあがるとハボックが煙草を咥え笑っている。
「おはよ。お互い休みで良かったな、オレも今起きたトコだ」
ファルマンは状況を把握できず口をパクパクさせている。
「ココはオレの家。潰れちゃったんで連れて帰ってきた」
ハボックが寝ていたソファーの上の毛布を見て、ダラダラと冷や汗を流しながらファルマンは固まる。
「気にすんなって。普段ソファーで寝ることも多いんだ」
髪を掻き上げファルマンはハッとなる。
「バレッタはテーブルの上」
ハボックが指さすとファルマンはほっとした顔で笑った。
「良かった、どうしようかと思いました」
バレッタを取りにベッドを降りて自分が着ているのがハボックのシャツ一枚だと言うことに気がついた。
「!!」
ファルマンの頭が真っ白になる。
「誤解の無いよーに言っておくが、服を脱いだのはお前だからな」
「っ?!」
「軍服がシワになるぞって言ったら脱ぎだしたんだ。側にあったそのシャツを自分で被って『これでいいですか?』ってな。
軍服は掛けてあそこ、シャツなんかはそこだ」
ファルマンは恥ずかしそうにあわあわ、オロオロしている。
「すっごい色っぽい格好で目の前にいるんだもん。まさに据え膳、どうしようか本気で悩んだぜ〜?
理性総動員で耐え抜いた自分に拍手モンだ」
ファルマンは頬を染め恥ずかしくて小さくなった。
起きてからのファルマンをハボックは笑った。
「なんかさ、お前のこと何考えてるのか分かり難いヤツだと思ってたけど訂正。良く見りゃすっげー分かりやすいのな」
随分な言われようだがハボックの正直な言葉と笑顔にファルマンは気にならなかった。
恥ずかしさが上回っているだけなのかもしれないが。
「そ、そうですか。でも分かり易いと言われたのは少尉で二人目です」
「ふーん?一人目は?」
「ヒューズ中佐です。いつものからかい口調で可愛いヤツだとバシバシ背中を叩かれました」
「中佐かー、あの人も凄い人だよな」
「ええ。とても尊敬しています・・・・・家族愛の部分は除いてですけれど」
「あれだけはいただけないな」
誰もがエリシアちゃんの写真では大変な目に遭っている、2人でクスクス笑った。
起きてから慌てることばかりだが、久しぶりにスッキリと穏やかな気持ちになった。そんな気持ちになったのもハボックのおかげだ
「ゆっくり休めたみたいだな。最近眠れなかったんだろ?」
誰にも話してないし、心配されるのが嫌でそんなそぶりも見せなかったはずなのに・・・・何故ハボックがそれを知っているのだろうか?
「んー?なんとなくお前を見てかな。スッキリした顔してるし」
ファルマンが驚いているとハボックが優しく笑い奥を指さした
「スッキリついでにシャワーでも浴びてくれば?」
「そんな、いいですよ。これ以上ご迷惑をかけるわけには」
「変な遠慮するなよ。ほらタオル」
引き出しからバスタオルを取り出しハボックは放った。
「ありがとうございます」
ファルマンは受け止めると言葉に甘えバスルームに向かった。
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