長編集

□つかの間のヒロイン(7)
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足を酷く挫いたファルマンにマスタング組はあれこれ世話を焼こうとする。
巡回はできないが元々デスクワークが主なので仕事に支障はない、その他の雑務もできると何とか言い含める。
座っていても辛かったが・・・・・マスタング以下全員にファルマンは信じさせて仕事をしていた。
そんなファルマンの気持ちを分かったからかハボックは何も言わなかった。
言わない代わりに事々に手を貸し、ファルマンも誤魔化しきれないのは分かっていたので優しさを受け止め感謝した。
変わらない温かさにファルマンは喜んだ。何よりハボックの側にいられることが嬉しかった。

巷で新しく流れ出したドラッグについて延々と続く会議に一同は出席し、
足のことなど何でもない様に狭くもない室内をファルマンは動き回る。
大部屋で見つからないように、心配かけないように、こっそりと足を抱えてファルマンは痛みに耐えていた。
そのうるると瞳を潤ませた姿は母性だか父性だかの本能に直撃し誰もが庇護・保護精神がMAXまで高まった。
ハボックは今まで以上に過保護になり、マスタング組全員が激甘になり側にいてくれた。

甲斐甲斐しく世話を焼き、騎士の様に支えているハボックは女性受けが良かった。
集まる視線と今までの噂の真偽を何度も問われれば否が応でもハボックの人気に気付かされる。
自分ではなく、今の女性の姿だから周囲が受け入れてくれている事実がいっそう身にしみて感じファルマンの心が悲鳴をあげた。
やはり自分の想いなど彼を汚してしまうだけのものなのだ。
今のままならハボックを見つめることもでき、優しさに触れることもできる。
元に戻れば一緒にいることは出来ない。
想いに気付かれてしまったら・・・・・あの朝の様に冷たい瞳で傷つけられたらきっと立ち直ることはできない。
せめて今だけでもと想う心をハボックの笑顔で押さえ込んだ。

この姿に変わる前の今まで通りになるようにファルマンは戻したかった。
同じ部屋で仕事をする上司と部下の距離に、戻そうとした。
足を挫いてからハボックが居ない時はブレダやホークアイが側にいるようになった。
それがファルマンを今まで通りに戻してくれる様な気がして、悪いことだと分かっていながらも利用させてもらった。
何時でもホークアイ達の側に居るようにし、ハボックの側に居るときは誰かと一緒に居るようにファルマンしていった。


 
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