長編集

□つかの間のヒロイン(4)
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「待て待て待て!激しく待て!」
「何だよブレダ」
「何だよじゃねぇ!ちゃんと説明しろ!お前ら昨日1日何してたんだよ?!」
「掃除して買い物行って・・・終わりか」
そうですね、とファルマンも頷く。
「それじゃ説明になってないだろうがっ!ファルマンが着てた男物ってお前のだろ?何でそれ着て広場で踊ってるんだよ」
「シャワーと着替えを貸したからだよ。軍服シワになるしサッパリしたいだろ?お前にだって何度も貸してるだろ?」
何を驚く必要がある?と言いたげな顔をハボックはする。
「お礼にってファルマンが掃除を手伝ってくれてさぁ、家ン中スッゲー汚くて助かっちゃった」
「ですから、大したことはしていません」
嬉しそうにしているハボックにファルマンは微笑んでいる。
「ででで、でも何で広場でダンスを?」
フュリーが驚きで混乱している。
「食べ物を補充しようと買い物に出たんだよ。そしたら広場にカーニバルが来てたんだ。
祭りの時良く踊ってた田舎の踊りやっててさぁ、懐かしくてつい踊っちゃった!」
「そこで少尉と踊りを眺めていたら側で子供達がワルツを覚えようとしていたんだよ。だから教えてあげたんだ」
ファルマンは思いだして優しく笑った。
「あの子達は一生懸命で可愛かったですよね」
「お互いの足踏んでてなー、アレも見てて懐かしかった」
「あー、子供達に教えるために踊ったわけか」
ブレダとフュリーはやっと2人の行動が理解できた。
「あっという間に夕方になって、飯が朝昼兼ねてだったから腹減っちゃってさぁ。外食ばっかだと金かかるだろ?
だから食材買い込んでオレの家に戻って喰ったんだよ」
「あー、そんで軍服もあるしもう一泊して一緒に来たワケか」
話を聞いてみてもおかしな所は無い。分かるんだけど納得いかない・・・・何でだろう?こうモヤモヤするのは。
ファルマンが女の姿だからか?親密すぎるというか、空気が甘く感じるのは。
ブレダが腕を組み2人を眺める。
「なぁブレー、今度踊りに行かない?」
「別にいいけどよ」
「私ももう一度見たいですね。とてもお上手でしたから」
「お前だって上手じゃん、すごい踊りやすかった」
そうですか?とファルマンははにかんでいる。
盛り上がっている3人にフュリーがしょんぼりする。
「皆さんいいですねー、ボク踊れないから寂しいです」
「ソーシャルダンスで良ければ教えてあげようか?」
「本当ですか!ありがとうございます!」
ファルマンの言葉にフュリーの顔がぱぁっと輝いた。
笑顔の2人を見て小さくハボックが笑ったのでブレダはちょっと眉を上げた。
「いやー、昨日と同じだなと思ってさ。踊れなくてしょぼくれてた子供達にアイツああやって声かけたんだよ」
子供達にお礼を言われた後の固まったファルマンを思い出しハボックはプッと吹き出した。
「なんだよ」
「そんでさ、子供達にお礼言われたんだけど・・・ありがとうお姉さんって、あの時のファルマンの顔!」
2人の会話が聞こえないわけがない、ファルマンが少し赤くなりながら軽く睨むとアレだよ!と指さしてハボックは笑った。
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