長編集

□つかの間のヒロイン(4)
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『もしもの為に男の時とどれだけ違うか、今の身体能力を確かめた方がいいわ』
中尉にそう言われてファルマンは訓練場へ向かった。
「すみません、ちょっといいですか?」
「ファルマン准尉、何かありましたか?」
ハボック隊が突然現れたファルマンに怪訝な顔をする。
「流すだけで結構ですので、どなたか組み手を一手お願いしたいのですが」
あー、ともうーともつかない声があがる。
「すみません、ハボック少尉に確認を取ってからの方が良かったですね。少尉はどちらに?」
「今はブレダ少尉と射撃場へ行ってます」
「そうですか、ありがとう」
ファルマンは射撃訓練場へハボックを探しに向かう。
ブレダが手前に居たのですぐに場所が分かり、近づくとブレダが気づきハボックも振り向いた。
「お?ファルマンどうした?」
「中尉から今の身体能力を確認するよう言われまして。ハボック隊のどなたかに組み手をお願いしたいのですが」
「わざわざ確認取りに来たの?別に良いのに。誰でも相手させてやって」
「ありがとうございます」
「これが終わったらそっち行くわ」
「はい」
ファルマンはにこやかに射撃場を後にした。

再び現れたファルマンにハボック隊はざわつく。
「お待たせしました。了承を得てきましたのでお願いします」
分かりましたとハボック隊の面々が頷く。
「ありがとう」
ファルマンは微笑むと髪をゴムで束ね直し動きやすいように服を脱いだ。
どよめきが起こりファルマンは振り向くと皆が頬を赤らめファルマンを見ている。
「どうかしましたか?」
「いえっ!何でもありませんっ!」
ファルマンは首を傾げながらも一通りストレッチを終えた。
「それではどなたかお願いします」
前へ進み出るとハボック隊はそっと後ろへ下がった。一歩ファルマンが進むごとに隊員達は一歩後ろへ下がる。
「あの・・?」
「じ、自分は無理であります!」
「申し訳ないです」
「お、お前いけよ!」
「ダメに決まってるだろ!」
「あの、ダメですか?ハボック少尉にはちゃんと了承を得てますけれど」
これでは何もできないのでファルマンは困った。
「お前ら何やってんだよ」
「隊長おおおおおっっ!!!!!」
「ハボック少尉」
隊員達がホッとしたようにハボックの側に駆け寄った。
「隊長、オレ達には無理です!!」
「はぁ?何言ってるんだよ」
「だって!」
「しょうがねぇなぁ。ファルマン!オレが相手してやるよ」
「ありがとうございます!」
ファルマンもホッと安心しにこやかにハボックの側に走り寄る。
ハボック隊はざーっと2人から離れた。
「「???」」
首を傾げながらもファルマンとハボックは向き合った。
「お願いします」
「おう」
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