長編集

□つかの間のヒロイン(5)
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「よっ!お仕事頑張ってるか?皆の衆!」
騒々しい挨拶と共に大部屋にヒューズが入ってきた。
「何しに来たヒューズ」
「もちろん仕事だよ」
アルバムはいらんぞ!とマスタングが釘を刺したのでヒューズは可愛いのに〜と残念そうにポケットから手を離した。
「押収品を確認しにきた」
ほい、とヒューズはマスタングに封筒を渡した。
「フン、横流しか」
書類を取り出しマスタングは頷いた。
「いわゆる闇オークションだ。武器・人身・パーツ・ドラッグ何でもありだ。こっちでも情報収集しといてくれ」
「わかった」
渡された書類をホークアイは確認する。
「このオークションだがテロとも繋がりがありそうでな。そっちも頼む」
「ずいぶん仕事を増やしてくれるじゃないか」
「なんなら替わるか?ココから流れてないだけ俺の方が仕事が多い。ところでファルマンはわんことお散歩中か?」
「わんこって・・・ええ、ハボックは巡回中ですがファルマンは他部署に書類を回しに行ってます」
ホークアイから書類を受け取りながらブレダは苦笑する。
「ロイ、この案件が終わるまでファルマン返して貰うぞ。資料や書類作成が山の様にあるからな!
ファルマンまだかな〜?待ちきれないから迎えに行こうっと!」
「・・・・ちゃんと返せよ」
「分かってるって〜。ブレダ君、後よろしくね」
ヒューズはファルマンのデスクの上の書類を指すと手を振り大部屋を出て行った。

大部屋へ戻る途中でするりと髪が抜けてバレッタが音を立てて落ちた。
留め方が甘かったようだ、慌ててファルマンは拾い上げ壊れていないか確かめた。
傷がないことにホッと安心しファルマンはポケットに大事にしまい、その姿勢のまま固まった。
「ずいぶん可愛くなったな、ファルマン」
「・・・私のことが・・・解るの、ですか?」
ファルマンは茫然と立ち尽くし目の前に現れた人影を見つめる。
「パパが解らなくてどうする?お前がどんな姿に変わったってわかる」
ファルマンの両目から涙があふれて溢れる。
「今日は仕事で来たんだ。お前の望む情報はまた今度な」
「来るのが・・・遅いですよ・・・・ずっと、待って・・・」
すまん、と優しく響く声にファルマンは駆け寄り飛び込んだ。
「ヒューズ、中佐」
包み込むように抱きとめファルマンの頭をヒューズは優しく撫でた。
「お前が辛い時に側に居てやれなくてスマン」
「いいえ・・っ、ちゃんと、来てくれましたっ・・・っ・・・
どうしていいか・・・・もう、分からなくて・・・・助けて、欲しくて・・・・・
中佐・・・お願いです、もう少しだけ・・・」
このままでいてください、とファルマンは顔を伏せてヒューズに寄りすがった。
「お前が望むならいつまでだって良いぞ」
ヒューズは優しく笑うと両腕を回しファルマンの涙を受け止めるようにしっかりと抱きしめた。
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