長編集

□つかの間のヒロイン(6)
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コツコツコツ・・・・ダダッ!タイミングを計り走り出す。
「っ!」
ハボックがファルマンを抱えるように横に引っ張り壁へ押し込み走り出す。
銃声が何発か辺りに轟く。
「あっぶねぇモン持ってるな」
「そう、ですね」
ありがとうございます、と走りながらファルマンは礼をいう。
「表から離れるなぁ」
「そう・・・ですね」
ファルマンがサッと身をかわし足をはらい、そのままハボックが襲ってきた相手を地面に叩きつけた。
息の合った行動に自然と笑みが浮かんでくる。
しかしドヤドヤっとした足音が聞こえてきて、ハボックは顔を顰め走りだし、ファルマンは溜め息をつき後を付いていく。
「あちらさんは一体何人いらっしゃることやら」
「始末書かなぁ?」
「勘弁して欲しいですね」
走って来たは良いもののこの先は袋小路で追い込まれる形になった。
ファルマンは首を振って引き返そうとするとハボックは仕方ないなと言う風に笑い、側のがらくたの上に片足をかけ壁の向こうを覗く。
OKとハボックはひょいとファルマンを担ぎ上げるとがらくたの上をサクサク登り壁を越える。
袋小路の向こう側へ降り立つとそっとファルマンを下ろした。
ハボックの動きの見事さにファルマンは声を立てる暇もなかった。
「お姫様抱っこの方が良かった?」
「ハボック少尉」
楽しそうなハボックに抗議の声を上げても笑ってかわされる。
「オレの家まで走れる?」
「はい」
「それじゃ飯は俺んトコで」
未だに追われているのに、緊張感がまるでない。
「ではまた何か作りますよ」
あまりにもいつも通りなハボックにファルマンもつられて笑った。
再び走り出し表通りに少し近づいたところで、いたぞ!向こうの通りだ!と叫ぶ声が聞こえる。
目の前に現れた追っ手2人をアッサリとハボックが片付け戻ろうとしたが既にふさがれて続々と暴漢共が寄り集まってくる。
「始末書の手伝いよろしく!」
「今回は仕方ありませんね」
ニヤリと笑うハボックにファルマンは苦笑した。
「よくもやりやがったな!」
「聞き飽きたな」
ハボックがバカにしたように笑う。
「陳腐なセリフだ」
飛びかかってきた男をファルマンは回し蹴りで地面に沈めた。


 
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