長編集

□つかの間のヒロイン(7)
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マスタングは腕を組みトントンと指で叩きながら目の前の封筒を見つめている。
「招待状が届くとは・・・もう少し時間があると思っていたのだがな」
「派手にやりすぎて上から切り捨てられたんだろう。招待状はその後始末と言ったところだ。
チャンスは一度きり、取りこぼすと後々面倒になる」
ヒューズの言葉にヤレヤレと呆れたようにマスタングは溜め息を吐いた。
「というわけだ諸君。いつも通り、そして正面から行く」
いつもの配置、マスタング護衛にホークアイ、潜入にハボック。経路確保・支援にブレダとファルマン、連絡にフュリー
Yes.sir!と全員でピッと敬礼をするとヒューズとマスタングが眉根をよせ視線を下げたので、どうしたのかと誰もが窺った。
「すまん」
「仕事ですから・・・お気になさらず」
ヒューズの謝罪にファルマンは困ったように微笑んだ。
「私の方が顔を知られていませんから、潜入に適しています」
それぞれが謝罪の意味にハッと気がつくとファルマンは苦笑した。
「今回はパーティです。女性を連れずに男性だけでゾロゾロ参加すれば怪しまれます。・・・丁度良かった」
ファルマンはホークアイに向かって微笑んだ。
「フォーマルドレスを一緒に選んでくれますか?」
「もちろんよ、動きやすくて准尉が綺麗に見える物を探し出すわ。
大佐も中佐もいるからお財布と荷物は心配しないでね」
「仕事とは別にとびっきり可愛いのを選んで買ってやるよ」
「買い物が終わったらせめてお茶くらいは一緒に飲んで欲しいね」
ホークアイはにっこりと微笑みヒューズとマスタングは苦笑した。
「それでは作戦準備に取りかかるとしようか」
4人は外出の準備を始め、残った者はファルマンとホークアイの仕事を分け合った。

買い物から戻って来たヒューズは心配そうにファルマンの側にいた。
「本当に大丈夫か?嫌ならもう一度見に行ってもいいんだぞ?」
「動きを妨げない良い物を選んでいただきました」
「だが、お前はいつもその格好だろう?露出が高すぎると感じてるんじゃないか?」
ちょっと恥ずかしそうに視線を彷徨わせた後ファルマンは真面目な顔をした。
「軍服と比べたらどのドレスでも露出が高いでしょう。恥ずかしい方が危険を招くよりずっと良いです。
あのドレスを選んでいただきましたが、着ると決めたのは私自身です」
「わかった」
もう言わないとヒューズは頷き、ファルマンも頷き返した。
「足に着けて慣らしておけよ」
「はい」
ヒューズは護身用の武器を渡し、ファルマンは確認して驚いた。
「お守りだ、1本やるよ」
ヒューズ愛用のナイフが銃と一緒に装備されている。
「お前に手を出すヤツはロイだろうとそいつでザックリやれ」
「まさか!私に手を出すような物好きはいませんよ」
ヒューズの言葉をファルマンは苦笑して受け流している。
「でも、ありがとうございます。とても嬉しいです」
温かい笑みでヒューズが頷くとファルマンは優しい微笑みを浮かべた。
「中佐が側で守ってくれている、そんな気がします」
ホント可愛いヤツだな〜vとヒューズはエリシア用のお髭じょりじょりをする。
さすがのファルマンも涙目で周囲に助けを求め、ホークアイの愛銃が火を噴いた。
マスタングとブレダは馬鹿なヤツ、懲りないですねと切り捨て、フュリーはただ青くなってオロオロし、
ハボックはふうっと煙を吐きだすと灰皿へ煙草を押しつぶした。


 
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