NOVEL1

□crescent moon
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薄らと光を放ち、深い紺空の一部を染める異質物。
暗とひしめく闇に呑み込まれないよう、儚いながらも存在を主張する。

それを見上げ、目の前に立ち上る白煙の行き先を追った。
手が悴む。
指先が痺れる。
感覚の鈍った指先で鈍く震える携帯電話のボタンを押した。



『…ザッ…く、ぼちゃ……ど、こ…』



ノイズが強く、聞こえる言葉は雑音に途切れる。
それでも、何を言っているかはわかる。



「ん?屋上」

『…わ、っ……た』



次の瞬間、軋む金属音を立て、校舎に繋がる錆ついた鉄扉が開いた。



『早かったろ。さすが、俺様』

「うん。ちょっとびっくりした」



耳に当てた携帯電話を外すと、そのまま無造作に後ろのポケットに仕舞う。
満足そうに笑いながら、久保田が寄りかかるフェンスに体重をかけた。
ギシッともミシッとも言える音が小さく鳴いた。



「早かったね」

「なんとなく、ここにいる気がしたから」

「そう」



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