NOVEL1
□sleeping drug
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何気なしに点けているテレビを見ながら、なんでもない言葉を交わす。
このCMのアイスが美味そうだとか、これって何に使うのかとか。
ほんとになんでもない会話。
その端々で、久保田の声に気の抜けた音が混じる。
「久保ちゃん…眠いんだろ」
「んー。そぉかも」
「だったら、寝ちまえよ。そんな船漕ぎながら、煙草吸ってたら、火事になんぞ」
「それは困るなぁ」
「ほら、毛布」
「ありがと」
「久保ちゃん、おやすみ」
君の声は安眠剤。
不眠症の僕でさえ、穏やかな眠りに誘われる。
君の声が無くなってしまえば、僕は眠ることを止めてしまうだろう。
君の言葉なしに、瞼を下すことはできなくなるだろう。
眠るなら、君の声で。
眠るなら、君の言葉で。
永遠の眠りにつくときも、君の…。
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