NOVEL1
□morning glow
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何も言わずに、時任は久保田のシャツを握しめた。
涙を流すことなく、澄んでいる瞳は心の奥を映し出す。
「久保ちゃんは俺の前から消えんなよ。俺はいなくならないから。ここにいるから」
「うん」
その手を振りほどくことなく、冷たくなった時任の体を包んだ。
その存在が自分の手の中にあることを確認するように。
空の端が白み始める。
世界で一番愚かな思いと命の元にも黄金色の空は広がる。
それに背を向けて、眠りにつく。
誰にもこの姿を見せないように朝日に背を向ける。
他のものなんていらない。
お前だけが。
君だけが。
『俺の全て』
I will disappear from the world with the morning glow.