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□携帯電話
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笑いながら携帯のボタンを器用に押してる。

…そんなに楽しい?

俺以外の人間の為に作るモノが。
俺以外の人間から与えられるモノが。

「楽しい?


 俺といて」

器用に動いてた指が止まった。
ゆっくりと向いた顔は不機嫌。

「意味わかんね。いきなりなんだよ」
「………なんでもない」

女々しいにも程がある。

間を空けずに肯定してもらえれば…。
お前の声で言ってもらえれば…。

感情に支配された、呆れるほど浅はかな頭。
酸素が行き届いているのかと疑問すら感じて、笑えてくる。

「まじで、意味わかんねぇんだけど。何が言いてぇの?」
「なんでもないから。…コンビニ行ってくる。煙草切れそうだし」
「俺も行く。つーか、逃げんなよ」
「…お前は待ってなさいね」

何かを喚いてた時任の声はちゃんと聞こえてた。
それでも、聞こえていない振りをして、軽い金属音を鳴らしながら玄関の鍵を閉めた。

傍にいれば、不必要に傷付けてしまいそうで…。

なんてのは、自己保身の言い訳にすぎない。
時任の言う通りに、俺は逃げてるのだろう。
そんな自分に吐き気を覚えるほどの嫌悪を感じるよ。

ポケットにある携帯電話を握りしめ、嘔吐感を紛らわそうと冷え始めた空気を肺まで吸った。




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