05/01の日記

02:27
予期せぬ再会 WA/久保田×時任
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※パラレルです。
子供の時に子猫(時任)を拾った久保田。隠れながら、世話をしていたが、ある日姿を消した子猫(時任)。
子猫(時任)が姿を消してから十数年が経ち…
な感じのパラレル話です。





視線の先には小さな柔らかそうな黒い肢体。それが、少し歩いては振り向き、また歩いては振り返る。
久保田はその小さな体に導かれるようにその後を追った。
夢を見ているかのような心許無い足取り。
しかし、その足は一歩、また一歩と先を歩く小さな体―――子猫の足跡を踏んでいった。




(…あの猫どこ行ったんだろう)

気付けば、久保田は雑木林の中にいた。
月が煌々と照らす満月の夜だとしても、闇が深くなった時間に一人雑木林にいるとは、自分の行動に違和感を感じえずにはいられない。
猫などそこらにたくさんいるではないか。でも、なぜあの猫のあとを追ってきたのだろう。
どうしてこんな所まで…と自分の行動に飽きれていると、「みゃあ」と子猫特有の高い鳴き声が耳に届いた。声に連られ、声のした方に視線を動かした。
その瞬間に氷の塊が滑るような感触が久保田の背中を駆けた。
視界に飛び込んできたのは、こちらをじっと眺める金の光。月に照らされ輝く、猫たちの無数の瞳だった。

息を飲む久保田の頭に警鐘が鳴る。
ここにいてはいけない。ここは人間が立ち入るべき場所ではない。即刻立ち去るべきだ。
しかし、本能的に告げる警鐘とは別に何かが声を張り上げる。
ここにいるべきだ。いなくてはいけない。会わなくては。会うためにここに連れて来られたんだ。
本能とは別の所で告げる言葉は自分の声に良く似ていて、抗うことができない。それに、「会う」とは誰に?そんな疑問すら浮かび上がり始める。
奔流する己の中は身体を動かすことさえ阻んだ。

どうすることもできずにいた久保田の耳に再び「みゃあ」と一つの鳴き声が響く。
鳴いた子猫は他よりは大きな木に向かい、また一鳴きした。
すると、その木の影から声が聞こえた。

「………お前なぁ、人間なんか連れてきちゃダメだって」

そう言いながら、姿を見せたのは人間。いや、人間のはずがない。造作は人間とほぼ変わらないが、決定的な違いが見てとれる。
艶のある黒髪の間からのぞく猫と同じような耳、細い下半身の後ろでゆっくりと動く長い二つの尾。
これが人間であるとは到底言えない。
姿を見せたそれは子猫に近付き、おもむろに首根っこを摘み、持ち上げた。
摘み上げられた子猫の耳は後ろにぴたとくっつき、細い尾は項垂れている。
しょげた子猫はか細い声で「みぃ」と鳴いた。
姿を現したそれは溜息交じりに言葉を吐きながら、目の前にぶら下がる子猫から視線を動かす。

「…ったく、どーっすかな。ま、でもしょうがねぇし…そこの人間!あんたには悪ぃけど死ん、で………」

物騒な言葉を吐きかけた口は開いたまま止まった。
瞳は久保田を凝視し、思わず手の力が抜けたのだろうか、摘み上げていた子猫がぽとりと柔らかい地面に落ちた。

「お、まえ………」

どうにか動かした口から発せられた言葉はそれだけで、そのまま体を翻し、その姿は闇の中に走って消えていく。
周りにいた猫たちもそれを追いかけ、林の中に姿を暗ました。

そこに残されたのは、突然現れた異形の人間らしきものをただ見ていた久保田と落とされた子猫のみ。
子猫は久保田に近寄り、足元に擦り寄る。擦り寄ってきた子猫を抱き上げ、久保田はその喉を擽る。ごろごろと音を鳴らし、子猫は目を細めた。

「お前、似てるね………お前はあいつの子供なのかな」

久保田の口からぽつりと言葉が零れた。

「お前が会わせたかったのは…あいつ?」

子猫は「にゃあ」と肯定とも否定とも取れる声で鳴いた。





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帰り道でやたらに猫を見かけ、突発で浮かんだパラレル。
予想以上に長いし、久保時の絡みがほとんどない。(汗)
ちなみに子猫時任は猫又になっているのです。妖怪!?

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