09/22の日記

01:01
原罪/久保田×時任
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パラレルです。
文中表記
彼→時任
男→久保田
になっています。



広いような、でも実は狭い空間。
白一色に染め上げられた壁に三方を囲まれて、一つだけ外が見える大きなアクリルガラスの壁。
アクリルガラスの向こうに長い廊下が続き、廊下の端に外の光が差し込んでいる。
あの先には何があるんだろう。
外の世界はどうなっているんだろう。
彼は膝を抱え込み、ぼんやりと虚ろになりかける頭で思った。

何もない時間はいつも、膝を抱え込み、壁に寄り添っていた。
この癖はいつの頃からだろう。
記憶を探っても、一番古いと思われる風景も同じものだった。
いつからここにいるのか。
なぜ自分がここにいるのか。
何のためにここにいるのか。
いくら問い掛けても、応える声はない。
ただ、口元に薄い笑みを浮かべられるだけだった。

どうして…
なんで…
俺は………なに?

堂々巡りになる自問に彼の内は閉じ始める。
何も考えなければ、何も感じなければ、何も起こりはしない。
期待など、希望など持たなければ、何が起きたとしても、起きなかったことになる。
それでいいんだ…。

ふと緩慢な彼の思考が遮られた。耳を劈く破壊音。
視線を動かせば、ぽかりと開いた壁の一部の前に男は立っていた。
歪に開いた穴。いつの間にそんなものがあったのだろう。
さっきの音がそれの正体か。
そう思いながら、彼は軽く咳を零した。
突如壁が壊れ、闖入者が現れたが、さして彼は驚かない。
しかし、彼は憐れみを込めた、悲しげな瞳で男を認識していた。

―――今度はあんた?

男の眉が軽く上がり、「あぁ、やっぱり」と呟いた。
彼はその言葉に首を傾げた。

―――やっぱり?なんのこと?

「君の声さ、俺に届くんだよね、直に。気になちゃって」

そう言いながら、男は軽くこめかみを指先で叩いた。

「外に出たい。どうしてここにいるのかわからない。連れ出して…ってさ」

男は彼の前に屈むと軽く微笑んだ。
手を伸ばし、彼の頭に触れた。
久しぶりに感じる体温に彼は激しく動揺した。
今まで現れた者たちには奇妙なものを見る目で見られ、時には罵倒されながら殴られたこともあった。
誰一人、彼に触れるものなどいなかった。

―――逃げよっか。

「どこまで逃げれるかわからない。保証もできない。それでもいいなら」

彼は瞳を瞬かせ、流れ込んできた思考と耳に届いた言葉を理解出来ずにいる。

―――…なんで?

「君の声さ、泣いてるみたいなんだよね。嫌いじゃないけど。でも、もっと違う声も聞きたいっていう興味本位?」

そう言うと男は立ち上がり、彼の手を掴むと強引に立ち上がらせた。
自分よりも高い背丈に彼は少し首を逸らせ、男の顔を仰ぎ見る。
男は無言で答えを待つが、その間にも思考が流れ込んでくる。

―――君はどうしたい?

彼は軽く咳き込みながら、ゆっくり口を開こうとする。
期待なんてしてはいけなかったのに。望んではいけなかったのに。
それでも、そう訊ねてくれる声がそこにある。
自分がどうしたいのか、望んでもいいのだと。

「外………いきたい…」

うんと男は頷くと、彼の手を掴んだまま歩き出した。
ぽかりと開いた穴を潜り、ぐるりと壁に沿った廊下を伝うと、いつも見つめるだけだった廊下に出た。
その先に差し込む光に向かって、男と彼は走り出した。
時折、彼は咳き込みながらも走り続ける。
彼は徐々に変化しているものに気付かないふりをした。それが報いの始まりだと、彼はどこかで察しながら。



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よくわからない設定ですみません。汗
時任は自分の思考が人に筒抜けちゃうんです。条件があって、波長の合う人限定みたいな。
んでもって、人に触れると人の思考が流れ込んでくる(これは誰でも)っていうね…。わかりづらい…。滝汗
まぁ、続きを考えてはいるのですが…
HAPPYではないです。
タイトルからすりゃあね…あははは。

時任の「いきたい」は
いろいろな解釈があると思うので、皆様それぞれの解釈で………。

ちなみにイメージソングは
藤田麻衣子さんの『金魚すくい』
イメージソングというよりも作業用BGMでエンドレスでした。

久しぶりに久保時?書いたなぁ…。


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