現代系短編集
□レモンキャンディー
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あまいけれど、あまいだけじゃない。
あまいけれど、ちょっとすっぱい。
そんなあまずっぱい、レモンキャンディーのような恋愛。
公園のベンチに座り、一人寂しげに足をブラブラさせている少女がいる。
この少女、篠崎香奈(しのざきかな)という名前の、16歳の少女である。
「遅いなぁー・・・」
香奈は自分の腕につけたピンク色の腕時計の針を見る。今の時間は6時10分だ。
彼女は6時からある人物を待っている。その人物とは6時に会う約束をしていた。つまり、かれこれ10分程待ちぼうけを食らっているのだ。
最初はにこにこしながら待っていた彼女も、今では不機嫌顔だ。
「電話でもしようかな〜」
そう言ってバックから携帯電話を取り出そうとした、そのときである。
「悪ぃ!待った?」
ある男が現れた、彼の名前は佐山孝一(さやまこういち)、香奈と同じ年である。
2人は同じ高校のクラスメート。そして、「恋人」という関係でもある。
「待ったよー。今、電話かけてみようとしたぐらいだよ〜」
「ごめんなー」
あんなに不満そうな顔をしていた香奈の顔も、孝一の姿を見たら晴れ晴れとしたものとなった。
孝一も香奈の隣に腰を下ろした。
今の季節は冬、しっかりと防寒対策をしていても、寒いというのが本音である。
だけど2人は、そんなことよりも2人でいられるということの嬉しさでいっぱいだった。
ふいに香奈がポケットから黄色い包みに包まれたキャンディーを取り出した。パッケージからして、レモン味のキャンディーだろう。
それを口に運ぶと、ゆるゆるだった口もキャンディーのすっぱさにキュッとしまる。