現代系短編集

□悪趣味な人
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「ごめん、君のことは友達以上に見ることができないんだ」
誰もいない放課後の体育館裏。
彼はそれだけ言うと去っていった。
私は一人きりになる。

別に悲しくなんて無い。だって当たり前の結果だもの。
告白したら、当然のごとく振られただけのこと。
当然のことなんだから悲しくなんか無い。
私は振られて当たり前な女。
誰も私のことを特別に思う人なんて存在しない。

────そんなこと、分かってるのに────

なのになぜか、目からは次から次へと液体が出てくる。
止めたいのに止めることができない。
後から後から出続ける。
私は袖で目を擦る。文字通りゴシゴシと。
だけど負けじと目からはポタポタと涙がこぼれてくる。


目を真っ赤にしながら帰り道を歩く。
今の時間は外も暗く、街灯の明かりだけが頼り。
この道は人通りの少ない道だから、滅多に人とはすれ違わない。
だけど今はそのほうが良い。
今は少しでも一人になりたかった。

そう思っていたのに、私の期待はまるでポケットに入れっぱなしにしたビスケットのように、粉々に砕かれてしまった。
後ろからした、あいつの言葉で。

「あれ? 七瀬じゃん?」

名前は呼ばれた、だけど振り返りたくない。
こんな顔を見せたくないし、今は誰とも話したくない。

「まあ、お前はよく頑張ったんじゃ無いの?
 ちゃんと自分の気持ちは伝えたしさ。やるべきことはやったって。」

その言葉で、私は振り返りざるを得なかった。

────こいつ、もしかして…見てたの?
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