現代系短編集

□暑い日はスマブラに限る
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「あ゛ー・・・暑いよー!!」
一番気温の上がる昼間、由紀は蒸し風呂並の暑さである自室でゴロゴロと寝転んでいた。
夏本番である・・・セミの鳴き声が余計に暑さを感じさせてイライラする。
今日、学校が休みなのが救いだ・・・こんな日に教室という名の閉鎖空間に閉じ込められたら参ってしまう。
「けれど・・・こんな暑い中PCつけてニコ動見ていたら、確実にPCが暴走するよな〜・・・」
自分のお気に入りのニコニコ動画を見ていれば暑くてもそれなりに我慢できる気もする。
だがクーラーの壊れてしまっているこの蒸し風呂状態の自室でPCを起動させるなんて自殺行為に近い。
単刀直入に言えば、十中八九PCが壊れる。
ゴロゴロと横たわりながら「あ゛ーん!! 骸さん、セバスチャン・・・助けてー!!」と奇声をあげる由紀。
ちなみに“骸さん”“セバスチャン”とは、由紀のお気に入りの漫画のキャラクターらしい。

すると突然、ガチャリという音と共にドアが開いた。
不機嫌そうに由紀はドアのほうを振り返る、そしてドアを開けた人物に力いっぱい金属製のシャーペンを投げつける。
「ちょ、痛い!! 金属はやめて由紀!!」
ドアを開けた人物は、悲しいことに変態ヲタクである我が彼氏、俊明だった。
だが由紀の部屋にも、無論自宅にも両方鍵がかけられていた、二重の鍵をどうやって乗り越えたんだこいつは。
「・・・今日、親が出かけているから家の鍵は閉めた!! しかも自分の部屋の鍵も閉めた!!」
半ば怒鳴るように由紀は俊明に向かってそう叫びつける。
「由紀の家の鍵も部屋の鍵も、俺はスペアキーつくってるよ」
当たり前のことのようにさらりと言いのける俊明。
その俊明に由紀はコンパスを投げつける、もちろん針のついているアレである。
「ちょ、さっきよりグレードアップしてんぞ!! 彼女の家の鍵持ってて何が悪いんだよ!?」
「うるせえー!!! このDQN野郎が!! お前はみくるちゃん等身大人形と遊んでろコラ!!」
「今日はハルヒ人形で遊びたい気分だな」
「わざわざ答えんじゃねえ!!」
暴言を交えて叫んだ由紀の言葉に真面目に返答する俊明、世間的には全く真面目な答えでは無いが。
そんな俊明に今度はハサミを構える由紀。
「ちょ!? ハサミはやめよう!! わ、分かった! 俺が悪かった!!」
さすがにハサミはやり過ぎか、ため息をついてハサミを持つ手を下ろす由紀。
「・・・で、何しに来たのよ?」
こんな暑い中わざわざ来たんだ、それなりに理由があるのだろう。
・・・とんでもない理由かもしれないが。
「あぁ! 由紀と一緒にスマブラしようと思って! 持ってきたんだ!」
「・・・スマブラ?」
「スマブラ」とは任天堂で作られたアクションゲーム「スマッシュブラザーズ」の略称だ。
・・・・・・・・え!? もしかして最新作のWii版のやつ!?
「やったあ! Wiiのやつずっとプレイしたかったんだよね〜!」
暑さも忘れ、勢い良く立ち上がったと思えば思いっきり両手をあげる由紀。
スマブラには64版、ゲームキューブ版、Wii版がある。
ゲームキューブは由紀の家にもある、なのでゲームキューブ版のスマブラはやったことがある。
だが経済的な理由でWiiは買えなかった。
だから最新作のWiiのスマブラはやったことが無い、やりたいことこの上なかったのだが。
そして今はその最新作であるWiiのスマブラがある! やったー!
「Wii? いやいや、これはゲームキューブ版のソフトだよ」
「・・・へっ?」
俊明の言葉に一瞬固まる由紀。
「俺の家にはゲームキューブ版のソフトしか無いよ」
俊明が「ほれ」と言って見せたソフトは確かにゲームキューブ版のもの、Wii版では無かった。
「・・・ゲームキューブ版のソフトくらいウチにもあるんじゃああああい!!!」
Wiiのプレイを楽しみにしていたのにその期待を打ち砕かれ、怒りに怒り由紀は先ほどのハサミを力を込めて俊明に投げつけた。
俊明はそれをなんとか寸でで避ける。
「ちょ、危なっ這煤@俺の股に当たりでもしたらMyテポドンが再起不能になんだろ!!」
「テポドン不能になれやああ!!!」
漫画本にCDケースに分厚い辞書と、部屋にある手じかなものをとにかく俊明へ投げつける由紀。
それを必死で避け続ける俊明。
「このっ!! 食らえっ!! 私の期待を打ち砕いた罰だ!! 咬み殺す!!」
「待て待てっ!! 次は俺のテポドンが打ち砕かれちゃうから!! 本当に悪かったよー!!」

数十分後、蒸し暑い部屋の中で体をフルに動かした2人は部屋でぐったりと伸びていた。
「・・・つ、疲れた・・・。もういいや、ゲームキューブ版でも良いからスマブラやろう」
ハァッとため息をつき、由紀は俊明にそう提案した。
「その言葉を待っていた! じゃあピーチは俺が使うな」
「ピーチ使うのかよ!? 気持ち悪っ!!」
そんな常識外れた無駄話をしながら2人で由紀の家にあるゲームキューブをセッティングし、ソフトを入れて電源をつける。
するとTV画面にはおなじみのスタート画面が映る。
「対戦っと・・・」
手馴れた具合で俊明がポチポチとボタンを押していく。そして自分の使うキャラクターの選択画面となった。
「じゃあ・・・私はピカチューで!」
由紀も手馴れたようにキャラクターを選択する、ついでに選んだピカチューには赤い帽子をかぶせてみる。
「俺はピーチっと!」
「ホントにピーチ使うのかよ!?」
「本当は巨乳な格闘ねーちゃんかロリ系猫耳少女を使ってみたいけr「スマブラなめてんのか貴様は!!」
こいつは本当にもう駄目だ・・・そんなキャラクターはギャルゲーやエロゲーにしか出てこないに決まってる。
そして戦闘フィールドはプププランドにした、顔のある木が中央に立っているフィールドだ。
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