直接の性描写はありませんが、なんだかなぁ、な話です。一部、人によっては差別的と思うような描写があるかもしれません。










声すら出ない。一瞬の浮上。弛緩。下降。歯を合わせて息をつめて痙攣する膝の裏を両手で押さえつけた。浅ましい灼熱の欲を、最奥に叩きつければ、次いでのし掛かるこの腹にかかる白濁。勢いよく飛び出た行き先もないそれは、やがて俺の皮膚の上で干からびる。同時に俺の吐き出した種は、薄い人工膜の中。やわらかな女の胎内を目指したつもりの先は、何にも続かない。脳髄が焦げそうな快楽の後の虚脱は、きっとぬか喜びを味あわされたお前達の呪いなのだろう。
獣のように荒い息。乾いた唇を潤す舌の色。絡んだ視線。冷めた眼が、早く退けと告げている。
ずるり、と視線に促されるまま密着させていた腰を引く。青白い月明かりを浴びた自身が鈍く浮き上がった。淫液とローションを滴らせる先端になにものにもなれなかった蛋白質がゴムの中で垂れ下がっている。
ああ、可哀想に。
避妊具にくるまれて果てるのなら、男の腸内などでない方が救われるだろうに。
どうせ同じく息絶えるならば、女の中が良かっただろうに。
ああ、可哀想だ。
この不毛で非生産的な行為に、愛などないのだから尚更、救われない。

「シャワー浴びてくる」
「どうぞ」

ああ、くだらない。どうして互いにこんな面倒な運動をするのだろう。
煩わしい。時間をかけて排泄器を解す。大して慣らさずとも、男を受け入れるように出来た女の方が楽なのに。

このまま眠ってしまおうか。流してしまうのが名残惜しい、なんて。一瞬でも考えてしまった自分が厭になった。


生臭い腹に手のひらで触れる。干からびたそこには、どうにもならない虚しさだけが、こびりついている。



20081117
蘭木視点
恋じゃない。ましてや愛などない。それでも繋がるのが、煩わしい。
イコール、虚しさ。



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