□きんいろせかい
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「遊戯はさ、向こうの遊戯を好きだろ?」
唐突な自分の質問に、普段は切れ長の鋭い眼差しがあどけなく見開かれる。開け放たれた空から注がれる太陽に、その眼が赤とも青ともいえず輝くのがよくわかって、城之内は眩しさに目を細めた。
そんな仕種にも遊戯は訝しがるような顔をして、柵越しに広がる町並みに視線を移す。
「……相棒はオレの゙相棒゙だ」
それだけじゃないか?
そう説く横顔が、今まで側で見てきたどんな感情にも当て嵌まらないような気がしてオレは口を塞がれる。不思議な感覚だった。自分が目標とする決闘王の顔でも、親友の顔でも、ましてもう一人の遊戯でもない。
―――これは誰だろう。

風が二人をすり抜けて、躍る髪の隙間から振り返る。ゆっくりとひらく唇が見えた。
「城之内くん、君は――」
ゴン、ゴン、ゴン、
辺りが大きな影に包まれ、同時にどうと巻き上がる風に目を開けていられなくなる。まだ余韻を残したまま過ぎ去っていく轟音の元凶を仰げばやけに立派な飛行機の姿。胴体には不本意ながらも見慣れてしまったローマ字があった。
「まぁたなんかする気か!あのバカ社長!」
城之内が顔をしかめる。
「さぁな」
決闘ならいつでも受け付けるぜ。その言葉に横を振り向くと、先程の見知らぬ男の姿はなく、気付けば不敵に微笑む遊戯だけが残されていた。
あれは、あの男は自分の見間違いだったのだろうか。まじまじと城之内が見詰めるも、声をかけるのはやはり遊戯その人で。
「なぁ城之内くん」
「あ? ああ、なんだ?」
「オレは君が好きだ」
目が点になる、ってこういうことを言うんじゃないか。それか鳩が豆鉄砲をくらう?
「……ハ……?」
「でも君だって、好きだろ?」
そう言って挑戦的に片目をつむる、その手にパズルを持って。
それが何を示しているかなんて、わかりきったことで、だから城之内も、はぐらかさずにその眼を捕えた。一言、頷くと遊戯は「やっぱり」と言った。

「だからやっぱり、君が好きだ」

柔らかに微笑む親友に対し、城之内は情けなく眉を下げる。背中の金網に身体を預けると、ひとつ深く息をついて足元を見つめた。

やーっぱ、かなわねぇーの。

もうとっくに小さくなった飛行機の音が耳に遺る。じりじりと昇る太陽が頭を焼いていくのに、不意にカッと視界の端をかすめた光に胸が撥ねた。まん丸い瞳が名前を呼ぶ。
 
 
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