dream
□初雪降る日の束縛。
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『お前また…俺の部屋を抜け出したそうだな』
今日は特別寒かった。
『何度も忠告したはずだが…この部屋から出るな、と…頭に入っていなかったのか?』
だからかも知れない。
余計外に出したく
なかった。
『…またどうせ、"散歩"などとくだらないことをいいだすんだろう?』
お前は俯いたまま
丈の長いスカートを
いじっている。
「…市丸様が…外に出なきゃ、気が滅入るだろう?って…言って下さったから…それに…まだ此処がどんなところか知らないから…」
"市丸様"、か……
一言目にはまずそれだ。あの方は人をからかう
ことが本当にお好きだ…
『もういい。喋るな。
…今日は勘弁してやるが…次はないぞ』
温かい小屋から
出したくなかった。
「あのっ……どこに…
行かれるのですか…?」
小さな、衣擦れの音にもかき消されそうな声で、俺に"質問"をした。
『………任務だ。』
俺はそれに一言で
答える。
…お前はそれでも
何かを言おうとしたが
俺はそれを打ち消す
ように扉をしめた。
あまりに軽い扉を。
そっと力を加えるだけで開いてしまう…出口を。