L×月(短編集2)
□風邪A
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『月くん…今日の捜査は早めに切り上げましょうか…』
竜崎は気だるい声で僕に話しだした。
ギョロンとした黒い瞳は何時もより覇気がない。
まぁ、いつも無いけど…
『いいよ…そうしようか。』
竜崎にニッコリ笑うと、パソコンの電源を切った。
僕が椅子から立ち上がると竜崎も立ち上がった。
カチャっと金属音が鳴り、僕の後を竜崎が着いてくる。
僕達は寝室に向かって歩き出した。
すると急に鎖がピーンと張ってドサッと音がする。
『ちょっと、竜崎?!大丈夫?!』
後ろを振り向くと、竜崎がグッタリと倒れていた。
『すいません…立ち眩みが…』
僕は慌てて竜崎を起こそうと腰に手を回した。
『竜崎、凄い熱!なんでもっと早く言わないんだよ!』
『すいません…』
少し掠れた声で謝る竜崎に何も言えなくなる。
僕は竜崎を寝室へと連れて行った。
ベッドに寝かせてアイスノンで冷やし、薬を飲ませ、体温計を口に入れた。
『ピピピィ…』
暫くすると音が鳴り、体温計には38℃と表示されていた。
『結構熱高いね、竜崎大丈夫?』
僕は竜崎の頬を撫でる。
僕の手が冷たくて気持ち良いのか、頬を寄せてくる竜崎にドキドキする。
少し早い呼吸は熱っぽくて、情事の時を思い出す。
竜崎が大変な時に何を考えてるんだ、僕は…
僕は思考を正常なものに直す為、頭をブンブンと振った。
『平気です…でも少し心細いです。』
『うん…僕がずっとついてるからね…』
竜崎の声が頼りなさげで、僕は優しく手を握った。
『側に居て欲しいですが、月くんに風邪が移るのは嫌です…』
潤む瞳を見つめると胸が苦しくなった。
『僕は平気!風邪なんて移らないから。』
僕はニッコリ笑うと竜崎の隣に寝転んだ。
『月くん、ギュッとしてください。寂しいです、頭がぼーっとします、喉が痛いです。』
『竜崎は甘えん坊だね。』
僕は竜崎に言われた通りギュッと抱き締めた。
つづく
弱ってしまった竜崎さん