L×月(長編)

□春
1ページ/1ページ

私達が屋敷で暮らしだして暫く経ち、ようやく生活にも慣れ少しづつ、月くんの笑顔も時々見れる様になった。



月くんの、精神状態は徐々に回復してきた。



でも、もっと話がしたい。


相変わらず、口数は少なくて静まりかえる部屋の中。


私は、パソコンを閉じると


『気分転換に外にでましょう。』



私は月くんの手を握り、外に出た。



ここは山奥で人気はほとんど無い。



庭も壮大に広かったので、少し散歩するにはうってつけだ。



月くんは、ギュッと私の手を握ると恐る恐る庭に足を踏み入れた。



季節は春。



桜が満開だ。



ハラハラと花びらが落ちてくる場所に、月くんは似合いすぎて、とても絵になった。



月くんは、小さな声で『綺麗だね』と呟いた。



私はたったそれだけで、とても嬉しかった。



花びらが月くんの頭に何枚かくっついた。



とても、美しく目を惹いた。



『僕の顔に何かついてる?』


月くんが不思議そうに尋ねた。



『いえ、月くんが余りにも美しいので見とれてました。』



『・・・』



月くんは嬉しそうに微笑むと、


『うれしい。』


と、笑った。



月くんは空を見上げ、眩しそうにすると、フッと力が抜けたように倒れた。



私は慌てて、月くんを抱き締めたので硬い地面に当たる事は無かった。



『大丈夫ですか??』



急に外に出したのが良くなかったんだろうか。。



『ごめん。余りにも、空が綺麗で、力抜けちゃった。』



『そうですか。ビックリしました。もう、戻ります??』



心配になり、私は月くんの体を支えながら尋ねた。



月くんは小さく頷いたので、私は月くんを抱き上げ、部屋にもどった。



私は窓際の椅子に月くんを座らせた。



月くんは、窓から桜を眺めた。



月くんの横顔は、とても儚げで美しかった。



私は爪をガジガジと噛んだ。



月くんが元気になる日は来るんだろうか。



いつ何が起こるかも分からないのに、私がもしも死んでしまっても、
一人で生きて行けるようになってほしい、そう強く願った。



おしまい

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ