L×月(長編)

□何気ない1日
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今日の月くんは、とても元気だ。



特に何かする訳ではないが、花瓶の水を取り替えたり、布団のシーツを綺麗にしたり些細な事だが、
余り動かない月くんにしては珍しい。


私は自然と笑みが溢れた。

花束を抱えて、微笑む月くんは、素敵だった。



『月くん、今日はどうしたんですか?とっても元気ですね。』



私は、月くんを優しく抱き締めた。



『今日は体の調子が良いみたい。なんだか動きたい気分なんだ。』



私は、すごく嬉しくて更にギュッと抱き締めた。



『あまり、無理はしないでくださいね。』



私は頬にキスを一つ落として、パソコンの前に戻った。



探偵業は今も続けているが、前の半分以下の量になってるので、
自由な時間が増えてのんびりしていた。



しかし一つ、どうしても解決出来ない事件があると言う事で手がけていた。



私は、小さくため息をつくと、パソコンと向き合い、キーボードを叩いた。



月くんは、花を綺麗に飾りつけると、私の背後に寄って来て、後ろから抱きついてきた。



突然の行動にビックリしたが、滅多に自分から身を寄せてこない月くんに、嬉しさが募った。



『どうしました?』



私はゆっくり振り向き、優しく問いかけると、小さな顔に、パッチリと大きなアーモンド色の瞳とぶつかった。



『ワタリさんと一緒に、ケーキ作って来ていい?竜崎に食べてもらいたい。』



と、耳元で呟やかれた。



『ええ、良いですよ。それは楽しみです。ありがとうございます。』



私がニッコリ笑うと、月くんはパッと目を見開いて、私のおでこにキスすると、部屋を出て行った。



私はおでこを、そっと触った。


月くんの、柔らかい口唇の感触が残っていて、誰も居なくなった部屋で私は頬を赤くした。



小さなキス一つで、心が温まる。


私も月くんの事が必要なんだと実感した。



なんだか急に頭が冴えてきてパッと閃き、手がけていた事件が、すんなり解決した。



私は大きく伸びをすると、月くんが消えて行ったキッチンを見つめた。



月くんが作ってくれるケーキ。

私は、とても楽しみにした。



つづく
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