L×キラ(短編集)
□トラワレ
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僕はキラとして竜崎に捕まった。
竜崎は僕を死刑にすると言っていたが、実際は死刑にする所か、僕を監禁し手元に置いた。
監禁と言うよりは軟禁に近かった。
宛てがわれた部屋はだだっ広く、ふかふかのベッドは今まで寝てた物より大きい。
しかし大きな窓から見える景色は全て森林で、見慣れた都会の街とは真逆だった。
しかもその窓は開け閉めが出来ない。
とても頑丈で、割る事も出来ない。
ただただ太陽の光と、月の光を差し込むだけの硝子に過ぎなかった。
何度も何度も割ろうとチェアーやテーブルを投げつけたりもしたが、窓硝子はとても頑丈で、投げつけた物が大破すると言う無惨なものだった。
外との通信する手段は一切無く、唯一の部屋の扉は何重にも鍵がかけられていて、竜崎しか開けれない。
部屋は僕の呼吸の音だけしかせず、静かな物だった。
カチャリとドアが開き竜崎が入ってきた。
初めの頃は竜崎に殴りかかって部屋の鍵を奪おうと試みた。
しかし竜崎は思いのほか強くて、僕が勝てた事は一度も無い。
だから最近は竜崎に抵抗する事を半ば諦めていた。
『月くん食事です。いい加減食べて下さい。』
トレーにはスープと野菜が乗せてあり、良い薫りがする。
『食べたくない。』
僕はプイッっと首を振ると、窓際のソファーに深く腰を掛けた。
そんな僕の態度に竜崎はため息をつくと、ゆっくり近づいてきた。
ビクッと肩が震える。
竜崎は僕をふんわりと抱き締めた。
『体壊しますよ。前みたいに高熱を出したら嫌でしょう?』
『・・・』
此処に監禁されて直ぐに、食事を取らない日々が続き、体調を崩して熱を出した事があった。
竜崎が熱心に看病してくれて大事には至らなかったワケだが・・・
竜崎は黙って下を向く僕の顔を上げ、軽く頬にキスをした。
『お願いですから食べて下さい。』
悲しそうに聞こえる声に苛々とする。
『僕をここから出せ。』
思わず潤みそうになる瞳を我慢して、何度言ったか分からない言葉を口にした。
『ダメです。』
案の定、何回も聞かされた言葉を今回も言われる。
僕はグッと拳に力を入れた。
つづく
トラワレ月。