L×キラ(短編集)
□疲れた心
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『疲れた。』
僕はシャープペンシルを握りながら机の上に突っ伏した。
家ではデスノートに名前を書き続け、Lの捜査に神経を擦り減らし、少し弱気になっていたのかも知れない。
独特な座り方で僕の隣に座る流河が側にいる目の前で、弱音を吐いてしまうなんて…
『お疲れのようですね…』
案の定話しかけてきた流河。
『ちょっとね…』
僕は軽く笑顔を向けると、黒板に書かれた文字をノートに写した。
どうも集中力に欠けてしまう…
何時もと同じ流河の視線が、今日はとても苦しくて痛く感じる。
黒い瞳が僕を捉えて離さない。
助けて…
僕は取り憑かれたようにフラリと立ち上がると、ノートもシャープペンシルも、鞄までもそのままに、講義室を出て行った。
後から流河が付いて来る。
僕は夢遊病者の様に千鳥足でフラフラと廊下を歩き表へと出る。
外は大雨だったが僕は気にせず、歩き続けた。
梅雨の豪雨が僕に降り注ぐ。
痛いくらいに叩きつける雨が、僕の心を冷やしていく。
奇怪な行動に目を丸くする流河の視線を、視界に入れないようにする為に瞳を閉じた。
水分を含んだ服が肌に纏わりつく。
頬に流れる水滴は大粒の涙のようだ。
(おいライト、頭でもオカシくなっちまったのか?)
僕の側で翼を羽ばたかせながら、リュークが心配そうにしている。
『いいや、大丈夫。ちょっと疲れただけだよ…』
。。。。。。
どれくらいの間佇んで居たのだろう。
外は少し暗くなっている。
相変わらず雨は激しいままだ。
流河は雨のかからない所で僕の行動を未だに凝視している。
暫くして僕は、ボトボトのまま構内へと戻り、そのままほったらかしにしていた鞄を取りに行った。
髪の毛からポタリポタリと落ちる雫を廊下に残し、誰も居ない講義室に入って、机の上に出しっぱなしにしていたノートやら、消しゴム、シャープペンシルを片付ける。
相変わらず流河は、僕の側で爪を噛みながら行動一つ一つを観察している。
しかし苦痛だった流河の視線は幾分かマシになっていた。
『どうしたんですか?月くんにしては珍しい行動だったので驚いてしまいました。』
『そうだろうね。僕も何故あんな行動を取ってしまったか分からないよ。』
本当は流河の視線から逃げ出したかったなんて、とても言えない。
つづく
完璧な人間なんて居てない。
意味不明な行動をしてしまう月。