L×キラ(短編集)

□熱中症
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真夏かと思う程の太陽の照り返しが、アスファルトから叩きつけられる。



頭上にギラつく太陽に体が悲鳴をあげる。



汗をあまりかかない僕は、体内に籠もる熱を上手く外へと排出が出来ないでいた。



『月くん、大丈夫ですか?体調悪そうですけど…』



ズルズルとスニーカーを引きずりながら、後をついてくる竜崎にイライラする。



どうして僕の後ばかり着いてくるんだ。



木陰に入ろうとも、一切その様な場所は無く、フラフラと歩き続ける。



ましてや、何故こんなに炎天下の中を歩き続ける事になったかも良く分からない。



竜崎は相変わらず一定の距離を保ちながら、僕の後を着いてくる。



悠々と顔色一つ変えず僕を見据えながら歩く様は、
竜崎の回りだけが快適な温度に調整されているのでは無いだろうかと、疑いたくなる程だ。



『私、暑いです。歩くの止めませんか?送りますよ。』




『・・・』



じゃあ、さっさと車に乗って帰れよ…



会話する気にもなれない。



ジリジリと皮膚が焼けて、色の白い僕の腕は真っ赤だ。



なんて暑い日なんだ…

真夏になったら、どうなるんだろう。



僕は天を仰いだ。



僕は急に頭が真っ白になり、持っていたカバンをドサッと落とすと、その場に倒れた。



離れて居た竜崎が近寄り、崩れる僕を抱き上げる。



『あ〜あ〜月くん、熱中症です。』



竜崎の間の抜けた声がやけに耳に残ったが、そのまま意識を失った。



不意に喉に流れ込んでくる水。



竜崎が飲ませてくれているみたいだ。



脱水症状を起こしていた僕は、竜崎が飲ませてくれる水を喉を鳴らしながら飲む。



僕はバカだ。



こんな事をされるのならば、竜崎が言ってくれた通りに車に乗せて貰えば良かったんだ。



僕はグッタリと竜崎にもたれて頭を肩に乗せる。



額がひんやりと冷たい。



どこから用意したのか濡れたタオルをあてられる。



気持ちいい。



『大丈夫ですか?少し横になりましょう。ホテルを用意します。』



竜崎の一言で、僕達を乗せた車は高級ホテルへと向かった。



つづく


熱射病の月。
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