L×キラ(短編集)

□依存と共存
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あれから…竜崎に監禁されてから僕は一度もこの部屋から出ていない。


空調も管理され、何一つ不十はしてないが、僕の心は完全に蝕まれていった。


壁はただただ白く、虚ろな瞳で焦点が合わないまま見つめるだけ。


今は一体、何月何日なんだ…


でもそんな事はもうどうでも良い。


日付なんて僕には何の意味も持たない。


肌触りの良いパジャマも真っ白で、壁も天井も白い空間に吸い込まれるような感覚に陥る。


時々様子を見に来ていた竜崎は最近来ない。


探偵業の方が忙しいのか、はたまた監視カメラで見てるのか…


先程ワタリさんが淹れてくれたブラックコーヒーが、机の上で湯気を立てている。


僕はそのティーカップを持つと、思い切り壁に叩きつけた。


ガシャーンと音を立てて、上品なティーカップは割れて床に散らばり、壁はコーヒーの色を吸って薄く汚れた。


そこだけ真っ白な壁に色が着き、なんだかとても落ち着いた。


壁まで歩いてその汚れた部分を指でなぞる。


床には陶器の破片が散らばっていたが、スリッパのお陰で怪我は免れた。


コーヒーで濡れた手を、絹のパジャマで拭った。


パジャマもその部分だけが薄茶色に変色して、とても落ち着いた。


『りゅう…ざきぃ…』


僕は竜崎の名前を呼んだ。


か細い声は空気に溶けて、また静寂が支配する。


何処に行ったんだよ…


お前が居ないと、僕はどうする事も出来ないじゃないか…


お前が居ないと、此処からも出られないじゃないか…


まぁお前が居ても、此処から出しては貰えないが…


急に竜崎が来ない事に苛立ちを感じる。


僕はソファーに置いてあったクッションをビリビリに引き千切った。


フワフワと羽毛が溢れ出し、雪の様に舞い落ちる。


其れまでもが真っ白で僕の神経を逆撫でさせる。


『竜崎、竜崎、りゅうざきー!!』


僕は大声を出して竜崎の名前を叫んだ。


『りゅうざき…りゅうざき…りゅうざき…』


寒くも無いのに自分の体を抱き締め震える。


僕はその場に立っていられなくて、崩れ落ちるように倒れた。


床に落ちる羽がフワフワと揺れて、僕はそれを握り締めながら意識を失った。


つづく
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