L×月(短編集1)


□喧嘩
1ページ/3ページ

また、ケンカになって僕達は殴り合いになってる。



同じような体つきなのに竜崎は、めちゃくちゃ強くてどちらかと言うと、もう勝敗は決まってるような物だ。



でも、僕だって男だ。

正直、負けたくない。



僕は、竜崎に向かってパンチを出すけど、手首を掴まれ、キツくギュッと握られた。


『んっっ。』

めちゃくちゃ痛い。

でも、それにひるむ事なく、反対の手を出すが、またもや手首を掴まれ阻止された。



ギリギリと竜崎の手の力がキツくなる。


『もう、やめましょうよ。』

竜崎は、僕にそう言ってきたが、ここで終わるのはヤダ。



頑張って、両手を振りほどき、竜崎の肩を掴んだ。


『・・・』


僕は無言のまま竜崎の言葉を無視して、また殴りかかった。



『ちっ。』

と、竜崎は軽く舌打ちすると、僕に足払いをした。


二人の体がグラッと傾き、僕は、床に叩きつけられた。

頭から、後ろに倒されて、どーんとすごい音がした。


目の前には、竜崎の顔があってこっちを見てる。


頭から、倒れたのに全然痛くない。
体だって、打ちつけられてる筈なのに、全然痛くない。


痛い所といえば、足払いされた足首と、さっき握られた手首だけ。



『・・・』


どうやら僕の体が、床に叩きつけらる瞬間に、竜崎は僕の頭と腰にスッと手を回し、衝撃を和らげてくれていたみたいだ。



僕の瞳から涙がこぼれた。

僕は、いっぱい、いっぱいなのに、竜崎には僕を庇う余裕もある。



涙はどんどん溢れてきて、嗚咽まで出てくる。

目の前の、竜崎を睨もうと思うのに、視界がぼやけて、ままならない。



『りゅう、ざきの、バカっ。』

喉が、ヒックヒック言って格好悪くて、余計涙が出てくる。



『泣かないで下さい。私が悪かったです。』



竜崎は、そう言うと僕の体を抱き締めた。



『うっ。んっ。』

僕の、嗚咽は酷くなる。


竜崎は、僕を泣き止ませようと、背中を優しく撫でてきた。



『ごめんなさい。月くん。』

竜崎は困ったような顔をして、僕のまぶたにキスを落として、涙を舌で舐め取った。



『んっ。』

ちょっとくすぐったいけど、竜崎の気持ちが伝わったような気がした。



つづく


ケンカは強いが月には弱い竜崎(笑)
ケンカ強いって良いね。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ