L×月(短編集1)
□喧嘩
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また、ケンカになって僕達は殴り合いになってる。
同じような体つきなのに竜崎は、めちゃくちゃ強くてどちらかと言うと、もう勝敗は決まってるような物だ。
でも、僕だって男だ。
正直、負けたくない。
僕は、竜崎に向かってパンチを出すけど、手首を掴まれ、キツくギュッと握られた。
『んっっ。』
めちゃくちゃ痛い。
でも、それにひるむ事なく、反対の手を出すが、またもや手首を掴まれ阻止された。
ギリギリと竜崎の手の力がキツくなる。
『もう、やめましょうよ。』
竜崎は、僕にそう言ってきたが、ここで終わるのはヤダ。
頑張って、両手を振りほどき、竜崎の肩を掴んだ。
『・・・』
僕は無言のまま竜崎の言葉を無視して、また殴りかかった。
『ちっ。』
と、竜崎は軽く舌打ちすると、僕に足払いをした。
二人の体がグラッと傾き、僕は、床に叩きつけられた。
頭から、後ろに倒されて、どーんとすごい音がした。
目の前には、竜崎の顔があってこっちを見てる。
頭から、倒れたのに全然痛くない。
体だって、打ちつけられてる筈なのに、全然痛くない。
痛い所といえば、足払いされた足首と、さっき握られた手首だけ。
『・・・』
どうやら僕の体が、床に叩きつけらる瞬間に、竜崎は僕の頭と腰にスッと手を回し、衝撃を和らげてくれていたみたいだ。
僕の瞳から涙がこぼれた。
僕は、いっぱい、いっぱいなのに、竜崎には僕を庇う余裕もある。
涙はどんどん溢れてきて、嗚咽まで出てくる。
目の前の、竜崎を睨もうと思うのに、視界がぼやけて、ままならない。
『りゅう、ざきの、バカっ。』
喉が、ヒックヒック言って格好悪くて、余計涙が出てくる。
『泣かないで下さい。私が悪かったです。』
竜崎は、そう言うと僕の体を抱き締めた。
『うっ。んっ。』
僕の、嗚咽は酷くなる。
竜崎は、僕を泣き止ませようと、背中を優しく撫でてきた。
『ごめんなさい。月くん。』
竜崎は困ったような顔をして、僕のまぶたにキスを落として、涙を舌で舐め取った。
『んっ。』
ちょっとくすぐったいけど、竜崎の気持ちが伝わったような気がした。
つづく
ケンカは強いが月には弱い竜崎(笑)
ケンカ強いって良いね。