L×月(短編集1)
□おるすばん
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月くんもたまには実家に帰らせてあげようと、1日だけではあるが、外出許可を出した。
まぁ、家には監視カメラを置かせてもらいましたが・・・
今日1日、捜査本部は私だけです。
ワタリにも、1日休暇を取らせました。
月くんと一緒に居るようになってから、格段に仕事が溜まってしまっているので、今日のうちに終わらせるつもりです。
私は、パソコンの前に座るとキーボードをパチパチと鳴らしながら仕事をし出しました。
シーンと静まり返る部屋。。。
いつもなら、月くんの笑い声や、怒った声、拗ねた声や、泣き声が、
部屋を包んでるのに、今は私が打ち込んでるキーボードの音のみ。
月くんは、何をしてるんでしょう。
私は少し気になって、監視カメラの映像を見た。
月くんは、今昼御飯みたいです。
ちなみに今日は、トンカツみたいです。
月くんの顔を見ると、心なしか元気が無いように見えます。
トンカツが余り好きではないんでしょうか・・・
でも、見様によっては、家族団らんのようにも見えます。
じーっと、月くんの観察をしてて、すっかり手が止まっていました。
慌てて、再度パソコンと向き合い、仕事再開です。
はぁ・・・なんだか喉が渇きました。
いつもなら月くんが、
『竜崎、休憩しようよぉ。お茶にしよう〜。』
って、抱き着いてきて、美味しい紅茶を淹れてくれるのに。。
まぁ、その休憩はかなり長時間になるんですが・・・
竜崎は仕方なく、台所に行って紅茶を入れた。
芳醇な香りがカップから漂う。
私は、紅茶を一口飲んだ。
『・・・』
あんまり美味しくは無かった。
月くんがいつも淹れてくれてる銘柄と同じなんですが。。。
なんだか、切ない気持ちになったが喉が渇いていたので、仕方なく飲んだ。
紅茶が美味しくない理由は、もう解っていた。
月くんが居ないからだ。
同じ物でも、月くんが淹れてくれたとなれば、更に美味しく感じる。
月くんと一緒に飲めば、普通の物でも美味しく感じる。
月くんの笑顔を見ながら、おしゃべりして飲む紅茶は、高級な店で飲む紅茶よりも、ずっとずっと美味しく感じるんだ。。。
つづく
一人になって気付く相手の存在価値。