L×月(短編集1)


□記憶喪失
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部屋にゴンと大きな音がしたかと思うと、竜崎が椅子から落ちた。



『竜崎、大丈夫?!』



僕は、慌てて竜崎に駆け寄った。



『???』



竜崎はじーっと僕の顔を見ている。



『竜崎、どうしたの?考え事でもしてたの?』



『この日本人は誰ですか?』



『えっ?竜崎、冗談はやめてよ!』



僕は、困った顔をすると、竜崎を起こそうと、手を引っぱった。



『やめてください。』



竜崎は、突然僕の手をパシッと払いのけると、自分で立ち上がり、部屋を出て行った。



竜崎・・・



どうしちゃったんだろう。
頭でも打って、おかしくなっちゃったのかな。。



僕は、竜崎が出て行った扉を見つめた。



暫くすると、竜崎がワタリさんと一緒に部屋に戻ってきた。



『月さん、先程は失礼しました。どうやら、頭を打った時に多少記憶がおかしくなってしまったようです。
ワタリからは、事情を聞いて理解しましたが、私は全く、あなたの事を覚えておりません。
何故だか分かりませんが、あなたの記憶だけがありません。』



『りゅうざき・・・』



それって、記憶喪失って事??
僕の事だけ覚えてないの??



『ワタリからは、今の状況を細かく聞きました。一緒に生活してるそうですね。よろしくお願いします。』


淡々とそう告げると、僕に握手を求めてきた。



信じられない。。


でも、ワタリさんと竜崎の行動を見てると、どうやら冗談じゃなさそうだ。



僕は、仕方なく竜崎の手をそっと握った。



ポタポタ。。。



気づかないうちに、僕は泣いていた。



『ホントに僕の事覚えてないの?』



『はい、申し訳ないです。早く思い出す様、最善を尽くします。』



『そっか・・・よろしく、竜崎。』



僕は、泣き顔を見られたくないので、クルッと後ろを向くと、



『ちょっと、疲れたので横になってきます。』



と、寝室に入った。



そのまま、ベッドにダイブすると、新しい涙がどんどん溢れてくる。



普段だったら、すぐ寝室に入って来て、



『どうして泣いてるんですか?』



と、優しく抱き締めてくれるのに。。。



何分経っても、寝室に竜崎は入ってこなかった。



つづく


記憶喪失ネタ。
竜崎は記憶を取り戻すのか…
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