L×月(短編集2)

□赤止まれ
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引きずられるように、車に乗せられる。



『勝手に飛び出して、下らない男に絡まれて何してるんですか?』



『・・・』



僕は竜崎の言葉を無視すると、無言のまま車の窓から空を見上げた。



ポツリポツリと降り出した雨が澱んた世界を濡らしていく。



竜崎はそんな僕をじぃーっと見つめると、小さくため息をついた。



『もう良いです。傷見せなさい。』



竜崎は僕の頬をそっと触るとマジマジと傷口を見た。



『随分、派手に殴られましたね。あの男、許せません。』



竜崎はガリガリと爪を噛んだ。



『・・・』



自分だって僕の事殴ったくせに。



竜崎に一言文句でも言おうと思い、口を開けたが思い止まる。



『月くんは、ずっとだんまりですね。まだケンカの事怒ってるんですか?』



竜崎は、フワッと僕を抱き締め耳元で囁いた。



優しい口調で宥めるように呟く竜崎の声を黙って聞く。



暫くしてから僕も竜崎の背に腕を回した。



『もぅ怒ってない。来てくれてありがとう。』



竜崎が助けてくれ無かったら、僕は今頃、大怪我してたに違いない。



僕は竜崎の胸の中に顔をうずめると、甘えるように摺りよった。



少し恥ずかしかったが、竜崎のケンカが強い所を見て格好良かったからだ。



『ごめんなさい、月くん。』



竜崎は、少し眉を下げながら、男に殴られた箇所をペロリと舐めた。



『んっ…』



竜崎の舌が僕の傷口を這いながら、痛みを和らげて行く。



少しピリッとした痛みもあったが、不思議だ。



竜崎には治癒能力があるのかと思うくらい、痛みが取れた。



竜崎の視線が僕の瞳とぶつかる。



漆黒の瞳に見つめられると、ドキドキと鼓動が激しくなった。



僕が静かに瞳を閉じると口唇に、竜崎の柔らかい口唇が重なった。



『んふっ…』



フレンチだったキスは濃厚になり、竜崎の舌に翻弄される。



くしゃりと髪に手を入れられ、頭を撫でられた。



『りゅ…んっ…あっ…』



ゆっくり口唇が離れて、銀色の糸が引いた。



『続きは帰ってからですね。』



僕は竜崎の言葉に小さく頷いた。



おしまい


ちょっぴり甘えんぼ月。
他人に月を触られて怒り浸透の竜崎。
糖度低め。
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