L×月(長編)
□何気ない1日
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月くんが、キッチンからケーキを持って戻ってきた。
お皿に乗った、まあるいケーキ。
私は椅子から降りて、ソファーに移動した。
テーブルに置かれたケーキはふわふわの白いクリームに包まれた、ショートケーキだった。
パティシエが作ったケーキとは程遠い、少し形が悪い小さなケーキ。
でも、沢山のイチゴが乗っていて、とても可愛らしかった。
殆んど、ワタリに手伝ってもらったみたいだが、私は泣きそうな程嬉しかった。
『いただきます。』
フォークで小さく掬うと、口に頬張った。
甘い生クリームがフワァっと口の中で溶けて、頬が落ちそうだった。
鼻の奥がツンとして、涙が出そうだったが、グッと我慢した。
『とても、美味しいです。ありがとうございます。』
私はお礼を言うと、時間をかけて大切に食べた。
月くんは、私の横でずっと何も話さず私の食べている顔を見ていた。
月くんの口数は、まだ少ないが、徐々に笑うことか多くなった。
私は、月くんを優しく抱き締めると、
『とても幸せです。』
と、口唇にキスをした。
月くんは、嬉しそうに笑うと、私を抱き締め返した。
柔らかい髪の毛が頬に当たり、シャンプーの良い香りがして、とても落ち着いた。
ゆっくり私の肩から顔をあげる月くんに、
『もっとキスしていいですか?』
と、尋ねた。
月くんは小さく頷くと、まぶたをゆっくり閉じた。
まつげを震わせて、私のキスを待つ月くんは、今すぐにでも押し倒して深く口づけしたくなるくらい、可憐だった。
私は小さなピンク色した、柔らかい口唇にそっとキスをした。
優しく歯列をなぞり、舌を絡めた。
舌の裏側に侵入して、舌を動かすと、月くんの体がビクビクと震えて、私に寄り添った。
『ぁぁ…ンハァ…ンクッ…。』
月くんの甘ったるい声が漏れて、抑えが利かなくなりそうだったが、一生懸命、優しくキスをした。
ゆっくり口唇を離すと、月くんの目元は潤んで朱色に染まり、色っぽかった。
『キスって、好きな人とすると気持ち良いね。』
さらっと、とてつもなく嬉しい事を言われた。
『そうですね。』
まだ昼下がり。
私達は、夕方まで甘いキスに溺れた。
おしまい