L×月(長編)

□街
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一生懸命、歩いてやっと店までたどり着いて選んだ物は、私が好きなチョコレートだった。



なんだか、胸が詰まって泣きそうになった。



『他には??』



私が尋ねると、月くんは首を横に振って、『何もいらない。』と言った。



その場で、月くんを抱き締めたくなったが、店内と言うこともあり、止めた。



帰り道、チョコレートが入った袋を抱えながら歩く月くんを見ていると、絶対幸せにしたいと心から思った。



車までたどり着いた時には、ほんの少しの距離を歩いただけだったが、月くんには疲労が見えた。



車に乗り込み、


『疲れたでしょ。私に凭れて寝て良いですよ。』



私がそう言うと、ゆっくり体を預けながら、規則正しい寝息をつき始めた。



寝顔を見ながら、何度も何度も頭を撫でた。


寝ながらも、お菓子の袋を握っている月くんに、涙が出てしまった。



無事に屋敷に戻ってくると、私に体を預けながら、
未だに眠る月くんを抱き上げ、部屋に戻る。



月くんをベッドに寝かせ、私はソファーに座り、タバコに火をつけた。



テーブルには、チョコレートが入ってる小さな袋。


小さな袋には、沢山の月くんの優しさが詰まっている。



気分転換にと、無理矢理に連れ出したが、
本当に月くんが気分転換出来たかどうかは、不明だ。


ただ単に疲れさせただけかも知れない。


本当に街に行った事が、良かったのか分からなくなり、爪を噛んだ。



暫くすると、月くんが身動ぎしたので、タバコの火を消して、ベッドに腰をかけた。



『買い物は楽しかったですか?』



頭を撫でながら、一番気になってた事を聞くと、



『楽しかったよ。竜崎にプレゼント買えて良かった。』



と、微笑んだ。



私は、咄嗟に月くんを抱き締めていた。



『ありがとうございます。』


とお礼を言った。


その声は、涙が出そうで震えてしまった。



『チョコレート食べてみて。』


と言われ、袋を開けて、チョコレートを口に頬張った。



いつも食べてるチョコレートより、美味しくないはずなのに、とっても甘く感じた。



『美味しいです。』



私がニッコリ笑うと、月くんも笑った。



これからも月くんの笑顔を大切にしたいと思った。



おしまい
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