L×月(長編)

□侵入者
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次の日になっても、私に抱きついたまま離れない月くんを見て、
セキュリティの甘さに後悔する。



朝から食事を取ろうとしない月くんを宥めて、栄養の高いスープを飲ませた。



これじゃ、屋敷に来てすぐの状態に逆戻りだ。



朝から、セキュリティを強化したが、今からじゃ遅かった。



まぁ、昨日入って来た侵入者は、私達を狙った訳では無く、
ただ金目のモノを盗んだだけだったが、今後どうなるかは分からない。。



私は大きなため息をついた。



月くんは、私のため息に体をビクつかせると、バッとベッドから降りた。



???



ベッドから出る事を、嫌がっていた月くんがどうしたのだろう。。



私は無言のまま、月くんを見つめた。



月くんは、そのままフラフラと窓際まで行くと、そっとガラスを触った。



『ガラスはもう割れないし、もう怖くないよ…だから、ため息つかないで…』



月くんの瞳から涙が溢れた。



『月くん・・・』



気を使わせてしまった。


ベッドから出ない月くんを、疎ましく思ってのため息では無かったのだが、
そう思ってしまったのだろう。



窓際に立つ月くんの足は小刻みに震えていた。



私はゆっくり月くんに、近づき抱き締めると、



『昨日は怖かったでしょう。すいませんでした。』



と謝罪した。



傷つけてしまった。



私に気を使い、一生懸命震える体を止めようとしていた。



私は月くんの涙を舌で舐め取り、顔中にキスを散りばめた。



『食事も無理して食べなくて良いです。ゆっくり食べれるようになりましょうね。』



私が優しく問いかけると、月くんが強張った頬を緩めた。



優しい子供。


頑張って、強がる月くんは、涙が出そうな程、私に嫌われまいと振る舞う。



私は、月くんを抱き締めたまま、泣いてしまった。


むしろ、私が子供かと言うような泣き方だった。



月くんは、初めはオドオドしていたが、泣き止まない私の頭を優しく撫でた。



月くんは、優しく綺麗な心の持ち主だ。



暫く経って落ち着くと、



『ここのセキュリティを完璧にします。外部からの侵入は絶対させません。
それで許してもらえますか?』



私が尋ねると、月くんはニッコリ笑った。



おしまい
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