L×月(長編)

□優しさ
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紅茶を淹れる事が、僕の仕事なんて…と、思うのでは無いかと心配したが、
意外にすんなり承諾してくれて良かった。



なかなかキッチンから姿を現さない月くんに心配になる。



見に行こうか悩んでると、月くんが戻ってきた。



ホッと肩を下ろした。



側にワタリは居なかった。


全部月くん一人で用意したようだった。



トレイに乗せて歩いて来るとき、カチャカチャとカップの音がしたので心配したが、
無事テーブルまで運んでくれた。



『いただきます。』



私は、そっとカップに口をつけて一口飲んでみた。



月くんは器用なのか、淹れてくれた紅茶は美味しかった。



『美味しいです。』



と、褒めると嬉しそうに笑った。



月くんの笑顔は本当に癒される。


紅茶も益々美味しくなったような気がした。



私達は支えあって生きている。



月くんは、私にだけ支えられてると思ってるのかも知れない。



でも、私だって月くんが居ないと生きてる意味が無くなる。



私は温かい紅茶を飲みながら、月くんの顔を見た。



少し穏やかな顔をしているように見えた。



ゆっくり紅茶を飲み干すと、カップをテーブルに置いた。



『月くん、私と一緒に居て幸せですか?』



『うん。』



月くんは、小さく頷き微笑んだ。



『私もですよ。』



わたしがそう告げると、月くんも嬉しそうに笑った。


『片付けてくるね。』



月くんは、飲み干したカップを洗いにまたキッチンに消えて行った。



するとキッチンからガチャンっと陶器が割れたような音がした。



初めは慣れないから仕方ない。



私は月くんが怪我をしたら困るとキッチンに走って行った。



案の定、割れたカップを見て月くんがオロオロしていた。



『怪我してないですか?』


『ごめ…カップ割れちゃった。』



しょんぼりする月くんに、


『初めは仕方ないです。段々慣れてくると思いますよ。』



と、ニッコリ笑った。



月くんは小さく『ありがとう。』と、言うと安堵したようだった。



少しずつ、少しずつで良い。



私に気を使う事なく、生きてほしい。



おわり
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