L×キラ(短編集)

□トラワレ
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僕はバッと立ち上がりドアまで走った。



ノブに手を掛け、こじ開けようと試みる。



ガチャガチャと煩くドアノブが音を立てるが、開く気配はない。



ドアをドンドンと激しく叩いて、『此処から出せ。』と大声を張り上げた。



しかし頑丈なドアはただただ行く手を阻むように佇んで、ビクともしない。



クラリと視界が揺れて目の前が霞む。



ろくに食事もしないまま大声を上げたのが良く無かったのか、ズキズキと頭痛がする。



その場に崩れそうになる僕を竜崎が抱き締めた。



『好きなんです。愛しているんです。何処にも行かせません。』



絞り出すように話す竜崎に益々苛立つ。



言い返したい言葉は山ほどあるのに、ズキリズキリと痛む頭に言葉が出て来ない。



抱き締める力が強くなり、胸を圧迫される。


体型は殆ど変わらないのに、なんでこいつはこんなに馬鹿力なんだ。



呼吸が苦しくなり、喉がヒュッと変な音を上げる。



竜崎は慌てて力を緩めると、



『すいません。大丈夫ですか?ベットに運びますから暴れないで下さいね。』



僕の体を軽々と抱き上げベットへと下ろされる。



ベットに軽く腰を掛け、優しく髪を撫でる竜崎を見る。



愛おしむような視線を投げかける竜崎に、奥歯を噛み締めた。



『点滴はなるべくしたくは無いんです。月くんの皮膚に針を刺したくない。
ほんの少しで良いですから、食事を取って下さい。』



落胆したした声に、僕は体ごと背を向けた。



『此処から出してくれたら、食べる。』



『それは無理です。』



即答される竜崎の返事。



何度この会話をしたら気が済むんだ。



『竜崎なんて大嫌いだ。』



『はい、知ってます。でも私は好きなんです。愛しているんです。』



竜崎は僕が横になるベットに入ってくると、後ろから抱き締めた。



先程のような抱き締め方では無く、壊れ物を扱うかのように優しく。



首筋に竜崎の髪が掛かり、くすぐったい。



『少し寝ましょうか?何もしませんから。』


『・・・』



当たり前だろ、竜崎のバカ。



僕は心の中で毒づくと、背中に竜崎の温もりを感じながら眠りについた。



つづく


体をトラワレ月。
心をトラワレL。
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