fairy story
□ランチタイム
1ページ/7ページ
-ある休日の昼下がり-
ご飯よ、という少しかん高い声とともに、ふんわりと良い匂いが漂う。
テーブルについていた細身の子どもはうん、と小さな声で応えると、読んでいた本を閉じて顔を上げた。
「クロナ、あんたまたあの女の本なんか読んでたの?」
オレンジ色の、どこか蛙を思わせる大きな帽子をかぶった女性がキッチンからひょこっと顔を出して言った。
手にはカレーライスを乗せた盆を持っている。
「ひまだったから…」
クロナと呼ばれた子どもは決まり悪そうにうつむくと、本をしまおうと席を立った。
クロナやこの女性、エルカが"あの女"のもとで活動するのは主に夜。休日の日中などはすることもやりたいこともなく、ただのんびりと隠れ家で過ごすしかないのだ。
ちょうど今のように。
「あ、クロナ!立ったついでにフリーを呼んできてくれない?外で筋トレしてるだろうから」
「うん」
あの人なら匂いを嗅ぎつけて来ると思うけど。
クロナはそう心の中でそう付け加えたものの、どうせすることもないのでのそのそと外へ出た。