fairy story
□ランチタイム
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今日はクロナたちが身を置いているこの地方では珍しいくらいの快晴だ。
クロナは滅多に日の中に出ないので、元気に照りつける太陽に目を細めながら、やっぱり家の中にいれば良かった、と後悔した。
「こんな時にラグナロクが出てくれれば、日陰になるのに」
と呟くと、頭の奥から誰がてめぇのために日傘になるかよ、と毒づく声が聞こえてきた。
一つ屋根ならぬ一つ身体に住む、乱暴で扱いにくい同居人だ。
クロナはしばらくだだっ広い庭を汗を拭きながら歩いていたが、耐えられなくなったのか、少し考えてからまた呟いた。
「今度飴玉買ってあげるから、お願いだよ…」
はじめからそう言や良いんだよ、と、クロナの背中から黒い物体が飛び出す。
徐々に人の形になってゆくラグナロクの陰で、クロナはほっとため息をついた。
「言っとくけどなクロナ、あの男ならお前と入れ替わりで裏口から入って来てたぞ」
クロナは情けない顔をラグナロクに向けた。
「そういうことこそ始めに言ってよ」
これでラグナロクの欲しがる飴玉分のお金を損したことになる。
クロナはついてないなぁ、と言いながら、ラグナロクを背負って猫背気味に家へと向かった。