fairy story

□テイクアウト
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01.飛んだ小鳥が墜ちる末





「ねえラグナロク、空を飛んでみたいって思ったことない?」



窓際で外を眺めていたクロナが、楽しそうな声色でそんなことを聞いてきた。


クロナの頭の上でうとうと昼寝をしていた俺は、思わずはあ?と上擦った声をあげてしまった。



「空?急に何だよ?」


「何となく、あの鳥を見てたらさ…」


と、クロナが細い指で指す方向を俺も見やると、白い鳥が青空の中をすぅ〜…と飛んで行くのが見えた。



「そんなに空飛びたいならあの鳥に乗っけてもらえよ」


「いや、そういうんじゃなくて…その…あんな風になれたら気持ち良いだろうなーと…」


うじうじ。


全くこいつはいつもこうだ。
別に自分のしたいことを言ったって罪になりゃしないのに、中途半端なところでうやむやにしようとする。



「あ?どっちなんだよはっきりしやがれ!!」


「あ、ぐりぐりしないでよ…痛いって…」



俺を起こしたときのクロナは何処へやら、何時ものごとく猫背気味な姿勢で下を向いてしまった。


昼寝を邪魔された俺としてはもっと小突きたい気分だったが、



…こうも天気が良いとそんな気も失せてしまう。



「…お前がもっと魂を俺に食わせてくれんなら、俺ももっとでかくなって飛べるようになるかもな」



再び窓の外を見ていたクロナが、本当?と嬉しそうにこちらを振り返る。



……余計なこと言ったなと思いつつ、それはお前次第だろ、と頭をつついた。





魂を集めるってのがどういうことか、こいつはまだ良く分かっていない。


俺が知ったことじゃないが、大変な目に合うに決まっているだろう。何せ大量の善人を殺すんだから…


こいつはこれからどんどん墜ちていく。生まれてきた時からの運命だ。でも俺にはどうしようもない。優しい言葉をかけてやるような義理もない。



ちょっかい出すくらいが関の山だ。それもクロナにとっては迷惑かもしれないが。



「飛べるようになる頃には僕も大きくなってるかな。そしたら重くなっちゃうね」



「知るか。それにお前なんかいくらでかくなっても俺にはかなわねえよ」








青い空。吹き抜ける風の音。




どんなに粗雑な俺でも、思わず穏やかな気持ちになっちまう時間。




こいつがどこまで墜ちていくのか、救いが来るのか来ないのか、墜ち行く末が何処なのか…



先のことは全く分からないが、せめて其所がこんな空が見えるような場所ならいい…




遠い遠い青を見ながら、そう思った。














(うさぎちゃん殺害以前の二人です。ラグナロク視点。)
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