古い話(↑新↓古)
□V.E.Y.O.U
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人混みの中で手を繋いでやろうとしたら、やんわりと回避された。
それが、全ての始まり。
V.E.Y.O.U
久しぶりにショックだった。何がそんなにショックだったのかは分からないが、とにかく目的地のファミレスについてから今まで、俺はずっと考えて込んでいる訳で。
ぶっちゃけた話、俺は昔から割りとそういうことに肯定的だった。男同士でもありなんだと知った時は、感動さえ覚えた。あれは確か小六の春。
愛に国境とか年齢なんて関係無いという話は良く聞くが、それならば性別なんて関係無いと言っても、全然おかしくないじゃないか。それなのに、これだけ文明が進んでいるこの国でそれを認めることは、誇れることではないらしい。
全くもってアホらしい。自由の国だなんて、やっぱり嘘だな。
「と思うんスけど」
「うん。元希がそんなに論理的な話し方をするなんてことにびっくりだよ俺は」
「なんだよそれ!」
クスクス笑う男は、ごめんごめんと言って長い足を組み換えた。さすが俺が惚れただけあって、そんななんでもない仕草でも一々様になる。最初から俺はこの男のことを気に入っていて、そして当たり前のように好きになった。向こうがどう思ってたのかは知らないし、今更どうでも良いことだ。今こうしてることが何よりも重要で重大なことだと信じたい。
「元希の言うことは賢明だよ。まあでも、いくら正当性があったって、文化を変えるってのはなかなか難しいことだけど」
「それって諦め?」
「どうだろう」
俺は少しがっかりして、氷が溶けて薄くなったコーラを一気に飲み干した。予想以上に不味いそれに、思わず舌を打つ。
大人の余裕、というやつだろうか。引き際とか、無駄なことはしないとか、そういうことなんだろうか。
俺が思ったこと、アンタは思ったことないの。制限された色んなこと、おかしいって考えたことないのかよ。