novel
□SS集
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夢幻漂流記〜この命、あなたのために。〜
暗い。寂しい。冷たい。
誰もいない闇の中で、俺は目覚めた。
辺りを見回すとそこは一面の闇。ああ、ここが俺の世界か。
天命守によって創られた俺は、生まれた時からその役割を心得ていた。俺の役割は、世界を闇に染める事。……随分損な役回りだな。
「目覚めたのか?」
俺が自分の与えられた運命(さだめ)に自嘲していると、不意に声を掛けられた。
紅い髪、漆黒の双眸、真白な肌は、まるで天女だ。
しかしすぐに悟る。この女は天女でなく、俺を辛い運命へと誘った悪魔だ。
「初めましてだな。わたしは霧衣。天命守霧衣だ。よろしくな、ナイト」
ナイト。それが俺の名前か。後から知ったが、ナイトとは西洋の意味で「夜」らしい。
なるほど。闇を司る俺にはピッタリだな。
別に闇が嫌いなわけではない。それ以前に、俺以上に闇を好きになる者はいないだろう。それは自我ではなく、本能なのだが。
そして闇が人から嫌われるものだと言う事も、俺は本能で知っていた。だからすぐに、霧衣(この女)を嫌いになった。