アネモネ

□イチ−立海編
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蓮二side

あの事件から俺は神奈川に転校する事になった。

病院に搬送された聡子は気がつけば錯乱し寝れば魘される、寝ても覚めても可哀想な状態だった。落ち着くには夏休みと言う期間はちょうど良かったのかもしれない。

病院の医師でも男性だと、体を強張らせて女医に変えてもらったほどだった。
俺や父や祖父、幸村や真田は平気なようだったのは幸いだったかもしれない。

極力事件の話しはもちろんしなかったが、魘されたり発狂しなくなったころ、聡子はふとこんな事を言った。

「私なんで入院したの?」
ちょうど俺と幸村と真田が見舞ってた時だった。
「なんか記憶が曖昧なんだよねー」
なんて困ったように笑って
真田が口を開こうとしたのを俺は遮った。

「終業式の日、大きな事故があったのだ。怪我は大したことが無かったが衝撃が大きかったのだろう。」

俺がそう言うと幸村が
「本当無事で良かったよ」
と肯定も否定もせずに会話を続けてくれた。
今日の日めくりのカレンダーを見て。
「私終業式からってこんなに寝てたんだ!?」
と大声を上げた。

その台詞を聞いてみんな驚いた。

何だかんだと俺たちは毎日のように聡子を見舞ってた。もちろん寝ている時も多かったが、起きているときもあったのだ。

スッポリとその記憶も無くなってるらしい。

もちろんあの時の記憶など無くしてしまったのなら無い方がいいと思う。

このまま過ごせればいいと思い俺は
「そうだな、新学期になったら筋力も衰えているだろうから辛いだろうし、気分が良いときは俺と散歩しよう」

と言うと、聡子は嬉しそうに笑って
「蓮二夏休み居てくれるの?」
と本当に嬉しそうによく分からない嬌声を上げた。
「夏休みだけじゃない、俺も家族もみんなこちらに越してきたんだ。ずっと一緒だ」
と俺が言うと。
嬉しすぎたのだろうか?聡子は泣き出した。
「……そっかー…だから終業式の前日の電話で元気無かったんだね…」
俺はまた驚くしか無かった。
「仲良い友達と離れちゃったんだね…」

確かに今回の事件の事は忘れたのかもしれない、しかしこんな状態の聡子は俺の事を優先して気にして考えようとする。

俺は本当に自分の事ばかりの人間だと、どうすればこんなに思いやれるんだろうと驚くしか無かった。

「父さんの仕事の都合だ聡子が気にやむことはないだろう。」
俺はそう言って頭を撫でる

「まー蓮二が居ても居なくても俺は聡子の友達なんだ体力作りの手伝いはいくらでもするよ」
そう言って幸村は俺が撫でてた手を押し退け、聡子を撫で始めた。

真田も撫ではしないが
「無論俺もだ」
と言うと
聡子は顔を挙げて
「ありがとう」
と本当に嬉しそうに笑った。
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