零式文章

□許しません!U
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害虫は、速やかに排除するべきなのです。byクイーン



『許しません!U』



「やぁ、エースじゃないか。」

クリスタリウムで本を読んでいたら、2組の候補生のコハク・カッツェに会った。
一週間前に謎の大怪我を負ったという噂を聞いたが、どうやら無事に怪我は完治したようだ。

「これから、一緒に昼食でもどうだい?お金の事は気にしなくて良いよ。全部僕が払うから。」

「…いや、遠慮しておく。」

彼が怪我をした原因を知っている僕は、彼の誘いを断った。彼の命を守る為にとった行動だったのだが、

「これより、0組緊急会議を行う。議題は、性懲りもなくエースに近寄った愚か者の処遇についてだ。」

全て無駄に終わった。

「前回は警告を兼ねてだった為、この前は半殺しで許してやったのですが…。コハク・カッツェは、障害があると燃えるタイプだったようです。警告は既に出しているので、今回は遠慮はいりませんね。二度と立ち上がれないぐらいに叩き潰してやりましょう。」

クイーンの言葉に、異議なしと頷く皆。殺る気に満ちあふれた皆に、止めに入る僕の言葉は相変わらず届かない。

さらに、問題が。

「ナギ様からの有り難い情報提供だ。このコハクって奴、小さい頃から人参が嫌いらしいぜ?出て来る食事全部人参まみれにしたら、こっちの手を汚さずに戦闘不能に追いやる事が出来るかもしれないぞ。大丈夫、食堂のおばちゃん達には既に話はしてる。快く快諾してくれたぜ。」

「行動が早くて助かります。」

何故か他のクラスの候補生であるナギと、

「待て、それでは長期戦になる。コハク・カッツェは薬を盛って気絶させた後、カヅサに引き渡す。健康体な被験者が欲しいと言っていたし、カヅサの悪い噂が増えるだけだから問題はないだろう。」

「あのカヅサの実験の贄にしちゃうの?可哀相〜。」

本来なら暴走する生徒を止める立場の筈の指揮隊長のクラサメもこの会議に参加しているという事だ。

「なんでいるんだ、ナギ。それと提案してないで止めてください、クラサメ隊長。」

皆の説得を早々に諦めた僕は、新たに会議に加わった二人をどうにかして止めようとした。しかし、

「え〜、俺とお前の仲じゃないか。変態に迫られて困ってるんだろ?力になるぜ!」

「変態は、カヅサ一人で十分だ。でなければ、オリエンスは間違いなく滅ぶだろう。誤った道に進んだ子供を正しい道に更正させるのが、大人の役目だ。」

ニコニコと笑いながら言うナギと、目をスッと細めながら言うクラサメ隊長。二人の様子に僕はあいた口が塞がらない。いったいこの二人に、コハクはどの様な人間として伝わっているんだ?
肩をポンポンと叩かれて、後ろを振り返った。すると、クイーンがにっこりと笑って。

「超変態のコハク・カッツェが朝昼晩時間関係なしにエースを追いかけ回すから、エースが今にも精神的苦痛で倒れそうだと話したら、二人は快く協力してくれると言ってくれました。」

「事実を捏造するな!僕は追いかけ回されてないし、倒れそうにもなってない!!」

クイーンに言い返すと、エースは優しいですねと彼女は言う。

「ああいう変態は、優しさを見せると手をつけられないぐらい調子に乗ります。エースだって、本当に追いかけ回されたくないでしょう?追いかけ回される前に、完膚なきまでに潰しておくべきなのです。」

「だからコハクはそんな人間じゃ…って、頭痛くなってきた…。」

誰も話を聞いてくれないし、止めようとしない。

この悲しい現状に頭が痛くなってきた。
ガンガンと痛む頭に思わずうずくまると、大変!とクイーンが悲鳴の様な声を上げた。

「エースが変態に対する恐怖のせいで体調不良に!誰か、彼を急いで医務室へ!!」

「だから、違うって…。」

違うと訴えてもやっぱり聞き入れて貰えず、僕は強制的に医務室で休むハメに。

「ごめん、コハク。僕が魔導院に来てからの何人目かの友人よ。どうか、強く生きてくれ…。」

その日の夕方。

魔導院に爆発があったとか。爆発音に混ざって男性の悲鳴が聞こえたという噂を耳にしたが、僕はそれは何かの間違いだと全力で信じたい。


【終】

ナギ君本当は0組の生徒として参加させてあげたいけど、そうなるとクラサメ隊長が…。

ごめんね、ナギ君。

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